品質マネジメントのプロセスと製品実現のプロセスの関係・その2
(H15年2月4週号)

1.参考の再分析
ISO9001:2000の「4.1 一般」の参考に

「品質マネジメントシステムに『必要な』プロセスには、@マネジメント活動、A資源の提供、B製品実現及びC測定にかかわるプロセスが含まれる。」

という解説がある。@からCの番号は、後の解説のためにつけた。この解説のあいまさから、混乱が生まれているようだ(このホームページの「基礎知識」のH14年10月4週号参照)。

@マネジメント活動
品質マネジメントシステムに『必要な』プロセスに「@マネジメント活動」のプロセスが含まれるのは、当然である。「生きた人間には命が必要である。」と言っているようなものである。自明の理である。おかしな説明である。

A資源の提供
「A資源の提供」は製品実現そのものの活動でないのでマネジメント活動の1つである。必要な資源をきちんと入手し、第一線に提供するプロセスは、マネジメントには当然必要である。戦争では、後方支援活動であり、兵站活動である。その証拠にISO9001:2000本文では「6 資源の運用管理」とわざわざ、「管理」がついているではないか。
それなのに、何故、@に含めないで独立させたのか。「人の循環器系に必要なものは、心臓と左心室である。」と言うようなものだ。左心室は心臓の一部である。「心臓」だけで十分である。

C測定
分析、改善につながるマネジメント活動の第1ステップである。Aと同様、何故、@に含めないで独立させたのか。測定は、分析・改善につながる。これらも品質マネジメントシステムが必要とするプロセスである。そして、逆に、次のマネジメントシステムに不可欠なプロセスである分析・改善が抜けている。

B製品実現のプロセス
しかし、製品実現のプロセスは、マネジメント活動ではない。品質マネジメントシステムに『必要な』ものというより、品質マネジメントシステムの活動が『補完する』相手である。「補完する」相手が製品実現のプロセスである。両者は概念的に独立した2者である。
品質マネジメントシステムがなくても、製品実現のシステムがあれば製品は作れる。しかし、品質は不安定で、無駄が多く、納品遅れが多いかもしれない。これを『補完』し、改善するためにマネジメントシステムがある。それが『補完』関係の意味である。

2.用語定義「品質計画書」の参考1との関係
そういう問題意識で、用語定義のISO9000:2000にある「3.7.5 品質計画書」の「参考1」を再読したら、次のように書いてあるのにひっかかった。

「通常、これらの手順には、品質マネジメントのプロセス及び製品実現のプロセスに関連するものが含まれる。」

すなわち、ここでは、品質マネジメントのプロセスと製品実現のプロセスとは明確に独立した説明となっている。この2つは、独立しながら『相互に必要な』とする関係、すなわち、「補完関係」にある(ISO9001:2000の「0.1 序文」の「この規格が規定する品質マネジメントシステムについての要求事項は、製品に対する要求事項を『補完』するものである。」参照)。
「除外」プロセスとは、ある企業にとって製品実現のプロセスにはないプロセスである。だから、その企業ではそのプロセスをマネジメントシステムで補完する必要がない。例えば、設計・開発のプロセスがない企業は、そのマネジメント活動は不要である。
しかし、ISO9001:2000では、「7.3 設計・開発」というタイトルはあるが、「設計・開発管理」がない。ISO9001:1994では、「4.4 設計管理」があったのに。
ISO9001:2000の「7.製品実現」は、正確には「7.製品実現プロセスの個々のプロセスに対応するマネジメントシステム」である。何故なら、ISO9001:2000はマネジメントシステム規格であり、企業個々の製品実現システムの規格ではないからだ。これは「7.5 製造及びサービスの提供」も同様で、ISO9001:2000は、製造サービスの提供そのものの規格でなく、そのマネジメント方法の規格である。
7.1製品実現計画の管理、7.2製品要求事項の明確化の管理、7.3設計・開発管理、7.4購買管理、7.5製造管理、7.6計測器管理というタイトルであれば、混乱が起きないであろう。
これは極めて、単純な理屈なのだが、それが、タイトルにきちんと反映していないのが、ISO9001:2000の特徴であり、混乱を招く原因である。何故こうなったのだろうか。