|
ISO19011:2002は、「品質及び/又は環境マネジメントシステム監査のための指針」である。この指針では、実務的に中心となるのは、「5.監査プログラムの管理」である。英語はManaging
an audit program である。通常、ISO9001:2000では、managingは管理と訳さず、マネジメントとカタカナであるか「運用管理」であるが、ここでは、「管理」と訳している。ISO9001:2000の日本語訳にそろえるのであれば、「監査プログラムのマネジメント」か「監査プログラムの運用管理」となる。
マネジメントシステムだから、例によってPDCAモデルを使っている。しかし、この継続改善モデルをマネジメントシステムモデルとして使うと、Doの扱いで混乱を起しやすい。この指針でも、予想された混乱が見られる。
マネジメントは、実務をしない。野球の監督は、フィールドに立たない。全体が見えないからである。これはバスケットもバレーも同じである。選手がプレーしている間、監視している。早めの選手交代もある。すなわち、Planの後、第一線がDoしている間、並行して、監視して第一線を支援する。これが英語で言うcontrolである。control
がきつい英語であればmonitorでもよい。試合後、勝ち負けがはっきりしてから、総括評価し、改善する。すなわち、一般図は次の図のようになる。

PDCAモデルをマネジメントプロセスに使うと、上図の第一線が活動中に、マネジャーが行う監視(Control, monitor)が抜けるという間違いを起す。何故なら、マネジメントプロセスの第2ステップが、監視でなく、Doという第一線活動になってしまうからである。監視はDoの終了後になってしまう。勝負がついて、負けてから選手交替をするというナンセンスなマネジメントプロセスになってしまう。
これは、ISO9001:2000にあてはまり、例えば、94年版で「4.4 設計管理Design control」とあったのが、2000年版では「7.3 設計・開発」となり、タイトルから「管理control」が消えている。設計マネジャーが設計・開発に没頭する無管理(no
control)モデルである。マネジメントシステム規格に、PDCAモデルを使うと第一線活動がDoとして、そのマネジメントプロセスの一部になってしまうからである。だから、後から出てくる「8.2.3 プロセスの監視」が分かりにくくなるのである。何故なら、プロセスの監視は、Doの後ではなく、Doの進行中に行われるからである。
しかし、実際に、ISO9001:2000に書いてある内容は94年版の「設計管理」の内容とほぼ同じで、設計・開発活動の第一線活動の内容でなく、設計・開発計画とか、設計・開発レビューとか、設計・開発検証とか、設計・開発の「管理活動」の内容である(このホームページの「2000年版項目別分類4.1:PDCAモデルの誤用:品質マネジメントプロセスの誤用
(H14年5月4週号)参照)。
すなわち、PDCAモデルをマネジメントプロセスモデルに使うと、下図のように、野球で言うと監督が遊んでいるモデルになる。ベンチで刻々、選手の活動(Do)と並行して統制・監視して先手を打っていく活動が消えてしまう。「ベンチ不在」現象となる。

今度のイラクの戦争で、アメリカ軍は、徹底的にイラク軍のcontrolの情報網を潰したという。このため、戦いは、アメリカ軍本部にcontrolされたアメリカ第一線と、イラクのバラバラな散発的な非効率な反抗との衝突に終わっているようだ。イラク軍は「ベンチ不在」となったのであろう。
|