2つの妥当性確認の混同 (H15年5月1週号)

1.T社でのトラブル
T社は、建設コンサルタント(土木構築物の設計)、測量、補償の適用範囲で、2000年版に移行認証した。この際、「7.5.2 製造及びサービス提供に関するプロセスの妥当性確認」を除外とした。
ところが、移行審査で、審査員から「将来、設計において妥当性確認を顧客より要求されるかもしれない。」ということから除外は問題だと言われた。
また、「7.5.2 e)妥当性の再確認」についても、「再確認とは、納めた製品(T社では「設計成果品」といっている)の妥当性を顧客から再度要求される意味も含まれているから、その要求に応える仕組みとして『除外』が正当ではないとも考えられる。」との話があった。
会社側は、ここでいう「再確認」は特殊工程の妥当性の確認で、例えばその工程の能力とか、基準とかの現物による見直しということであって、顧客に提出した製品(「設計成果品」}の再確認ではない、設計成果物の妥当性確認は2度だろうと3度だろうと必要であれば行うが、それは「7.3.6設計・開発の妥当性確認」で行うと主張した。もちろん、T社は、「7.3.6設計・開発の妥当性確認」は除外ではない。
「将来」という意味が今一判然としないが、仮に「設計成果品」が、構築物でもって妥当性確認を求められるということであれば、「7.3.6 設計の妥当性確認」の範疇になり、「7.5.2 製造及びサービス提供に関するプロセスの妥当性確認」の問題とは全く関係がない。そのような論議があって、会社側がきちんと主張して、結局除外となった。しかし、審査員は、なんとなく、納得しないようであったという。
こういう当たり前のことを間違えるということは、審査員に基本的な常識が欠落していることが原因となっていることが多く、そのため、すれ違いとなりやすい。

2.トラブルに対するコメント
(1)コンサルタント会社の特徴
ISO9001:2000の「7.3.6設計・開発の妥当性確認」と「7.5.2 製造及びサービス提供に関するプロセス(特殊工程)の妥当性確認」 に同じ妥当性の確認の言葉があるからといって、2つの妥当性の確認の内容も同じに ならない。 前者は「設計の質」の妥当性に関することであり、後者は「特殊工程の管理条件」の妥当性に関することである。

「中小企業のためのISO9001:ISO/TC176よりの助言」(2000年版向け:和訳なし)では「7.3.6 設計の妥当性確認」に次のような解説がある。

「『製品』が設計そのもののため、設計・開発の妥当性確認が複雑なことがある。例えば、建築設計コンサルタントのアウトプットの場合、最終の建設物で妥当性確認ができないことがある。この場合は、建築物のスケッチとか縮小モデル、バーチャル・リアリティのコンピューターシミュレーションなどを顧客が受領したことをもって、妥当性確認とすることがあろう。
多くのソフトウエア・プロジェクトのように、顧客が妥当性確認を行い、その結果を設計者にフィードバックすることもできる。」

本来、「設計成果品」の妥当性確認は、成果品が顧客に提出され、ここから建設業者に渡たり、実際に工事で行われる。しかし、成果品を「製品」として扱う以上、そこで一旦切れることになる。上記の解説では、顧客の受領をもってそれに代えている。
私も数社、コンサルタント会社のISO9001取得の支援をしたが、すべて、顧客が成果品を受領したことの証明を以って、「7.3.6 設計・開発の妥当性確認」の証明として、認証を得ている。

いずれにせよ、将来、顧客が実際の建設工事までの管理を要求することは考えられるが、それは「7.5.2 製造及びサービス提供に関するプロセスの妥当性確認」とは全く関係がない。

(2)コンサルタント会社の製造工程
コンサルタント会社は、製品実現のプロセスのうち、製造及びサービス提供機能は、顧客を一旦経由して、別の会社が行うので、基本的に、「7.5 製造及びサービス提供」の業務はない。せいぜい、適用しようとすると「設計成果品」の製本工程(コピー、製本綴じ、装丁など)くらいである。「製本工程」の品質は、顧客が要求した装丁、頁数、印刷仕上がり、部数などであるから、簡単に検査可能である。したがって、「7.5.2 製造及びサービス提供に関するプロセスの妥当性確認」を必要とする工程はなく、将来もありえない。顧客も簡単に検査できる項目を、わざわざ、特殊工程にして条件管理にせよという不可能な要求することはありえない。
製本工程が特殊工程でない限り、将来も「7.5.2 製造及びサービス提供に関するプロセスの妥当性確認」は除外項目となる。
幼稚な審査ミスであるが、かなりの金額を支払って、こんな品質向上と関係がないマイナスレベルで議論をせざるを得ない会社側も時間の無駄で、迷惑であろう。