A社の品質目標の達成度とマネジメントレビューのアウトプット
(H15年5月3週号)

1.品質目標の達成度
20人ほどの中小企業A社は、その業種の特性上、ほとんどクレームがなく、私が94年版の頃から関係して数年になるが、不適合は、内部的なものが1件あっただけで、顧客クレームはゼロである。別に不適合をかくしているわけでなく、真面目な会社で、定着も良い。
したがって、2000年版でも、各部門(3部門)ともこの良好な状態をキープすべく、品質目標は、それぞれの内部の作業ミスをゼロとした。
ところが移行審査に来た審査員が、改善点として「ミス・ゼロだと達成度が分からない。『品質目標計画書』の備考欄に『達成度が判定可能な目標』と注記すべきだ。」と言うのである。管理責任者は何を言われたのか訳がわからなく、「禅問答」のような指摘なので、質問が私に来た。
私も禅問答の真意は理解できないが、おそらく審査員はISO9001:2000の「5.4.1品質目標」で「品質目標はその達成度が判定可能であること。」という本文の文字が、A社の『品質目標計画書』にないことにこだわっていたのであろうと返事をした。

A社は、下のように左側の要求に対して、右側の自社なりの目標を設定している。

「達成度が判定可能な目標」=「各部門の作業ミスゼロ」

審査員は、左側の言葉は自分の頭の中か、チェックリストにおいて、A社では、右側だけを審査すればよいのである。「達成度が判定可能」は英語のmeasurableの訳であり、簡単に言えば、理想的には数字目標がよいという意味であり、「整理整頓をきちんとする」というような抽象的な目標は駄目だという意味である。実に単純な要求である。だから、A社のゼロは数字目標だから立派にISO9001:2000要求を満たしている。何故なら、1件でもミスが出たら達成度はゼロと判定可能である。1件も出なかったなら、達成度は100%と判定可能である。明快である。常識を持っている人なら「OKです。」で終わるレベルのことである。どうも、この審査員は、「達成度」という言葉にこだわって、0%と100%のディジタルの2つの値だけでなく、70%とかの連続的なアナログ数値をイメージにもっているようである。
“文書化した手順”要求のない項目は、実態の解釈で審査すべきであるが、審査員の「力量」を問われることになることは確かである。

2.マネジメントレビューのアウトプット
A社はマネジメントレビューについては、マニュアルに「マネジメントレビューのアウトプットは『マネジメントレビュー記録書』に明記し、それを記録として保管する。」とある。これに対して、その審査員は、マニュアルにマネジメントレビューのアウトプットのa)、b)、c)が書いていないと指摘したという。マニュアルにa)、b)、c)の規格の文字を丸写しをせよという意味のないshallは当然ない。“文書化した手順”もない。審査員は、『マネジメントレビュー記録書』を見て、判断すればよいのである。
管理責任者に聞いたら『マネジメントレビュー記録書』には、例えば「〇〇資格の技術要員の採用が必要」とあり、これはISO9001:2000の言葉で言うと、c)の「資源の必要性」に対応させているという。
すなわち、A社の今年度のマネジメントレビューでは、左側の一般要求に対して、右側のアウトプットをしているのである。

c)「資源の必要性」=「〇〇資格の技術要員の採用が必要」

審査員は「資源の必要性」という言葉そのものがないと言って騒いでいたようである。管理責任者は、A社は他のa)もb)についても、規格通りの語句はないが、A社の特質に対応した具体的なことを書いているという。
審査員は、左側の一般的な要求の言葉は自分の頭の中か、チェックリストにおいて、右側のA社の内容がISO9001:2000のc)の要求を満足するか、A社のマニュアルにそって『マネジメントレビュー記録書』の書類で審査すればよいのである。「技術者の採用の必要性」は資源の必要性を意味するから、要求を満たしている。明快である。常識を持っている人なら「OKです。」で終わりである。左側の言葉を一々、企業側が書く必要は、個別企業では異なるので意味がない。
本質が理解できない典型的なテニオハ審査の好例である。ISO9001:2000の序文の「画一的な文書の要求はしない。」という意味が分からない審査の一例である。

3.解決策
これは、常識がないレベルの議論だから、審査の場でいくら議論しても「禅問答」的なすれ違いで終わる。そこで、そういう議論の無駄の回避策として、私のほうで「達成度が判定可能」と「マネジメントレビューのアウトプット」のいろいろな会社の事例を含めた解説テキスト文を作り、管理責任者に送り、それを次のサーベイランスのときに審査員に提示して読んでもらったほうがよいとアドバイスした。

この審査員は、アルバイト的にコンサルもしているという。このようなコンサルを受けた企業は、「禅問答」に苦しんでいるだろう。できたシステムは、ゴタゴタと意味のない言葉が散在し、一貫した合理性がなく、分かりにくいシステムになろう。