是正処置・予防処置の必要性の評価と効果の評価とは?
(H15年7月4週号)

1.94年版からの引継ぎ
2000年版の「8.5.2 是正処置」には「是正処置は、発見された不適合のもつ影響に見合うものであること。」とある。94年版の「是正処置又は予防処置は、問題の大きさに対して適切な程度とし、遭遇するリスクに釣り合う程度とすること」と同じ意味が引き継がれており、基本的な変更はない。

2.ステップの中での位置付け
では、この「発見された不適合のもつ影響に見合うものであること。」は、是正処置のどのステップで実行するのであろうか。「中小企業のためのISO9000:ISO/TC176よりの助言」では、「10ドルの問題に対して百万ドルを費やす必要はない。顧客に影響を与えるような問題は、重要なものとして扱うべきである。」としている。こういう判断は、原因が分からないと不可能である。
通常の改善対策のステップは、
@顕在あるいは潜在的な不適合の確認
Aその原因追求
B原因をつぶすための改善策の決定
C改善策の実施
D改善策の実施完了の確認
E実施した改善策の効果確認
であるが、2000年版では、基本的なステップの流れとして、「影響に見合ったものであること」のチェックプロセスを、上記のステップのAとBの間にc)「処置の必要性の評価」として「原因追求」の後に挿入している。これは当然であろう。
「10ドルの問題に対して百万ドルを費やす必要はない。顧客に影響を与えるような問題は、重要なものとして扱うべきである。」という説明は、この挿入されたc)の判断の参考になろう。

3.重要度の判断のシステム設計
94年版の適用範囲で「当社は、是正処置又は予防処置は、問題の大きさに対して適切な程度とし、遭遇するリスクに釣り合う程度とすることために、〇〇〇の基準で、その必要性を判断して行う。」とあれば、この基準が2000年版の「影響に見合うものであること」と同じになる。また、是正処置及び予防処置のステップ中ある「処置の必要性の評価」も、個別に対応しないで、マニュアルで、「処置の必要性の評価は適用範囲の基準による」と一括して定めておけば、個別の是正処置と予防処置の中で同じ基準を繰返し述べる必要はなくなる。

4.効果確認
94年版では、「処置が効果的であることを確実にする管理の適用」とあり、「効果的」の英語(effective) は、「効果的」というよりも「確実な実施」という意味にも解釈されるので、DとEの区別が明確でなかった。効果的ならis effective でなく、has been effectiveとなるべきだという意見もあった。事実、「中小企業のためのISO9000:ISO/TC176よりの助言」では、94年版のときから明確で、「改善策が継続的に効果的であるかどうかを確認するため、適当な期間をおいた後、フォローアップすべきである。」としてEのステップを明記している。この英語は has been effectiveである。これは、2000年版の解説も同様である。
最近、アメリカのTC176の委員が書いた「ISO9001:2000:解説」2版:AQA刊(和訳なし)を読んだら、同様に効果的かどうかの実施後のフォローアップを解説していた。
帳票設計上、対策書にフォローアップ欄をつけるか、多品種少量の場合は、月報などの別紙で追いかけるという代替案もある。

5.水平展開は是正処置か?
ISO/TS16949(QS9000の2000年版対応)では、「8.5.2.3 是正処置の水平展開」として、是正処置を他の類似のプロセス又は製品に適用する要求がある。この「水平展開」は英語のimpactの意訳であるが、これを是正処置に含めている。
ところが、この類似のプロセスや製品は、不適合を出していない。初発がない。そうすると、「是正処置」は再発予防という定義に反する。定義では、「予防処置」である。
「中小企業のためのISO9000:ISO/TC176よりの助言」では、94年版のときから水平展開の例をあげ、予防処置として扱っている。
先の、アメリカの「ISO9001:2000:解説」2版:AQA刊(和訳なし)では、水平展開を予防処置に含めている。
単純に言えば、未発生の製品は、類似品番であろうと、品番レベルでは不適合が発生していないので再発防止ではない。したがって「是正処置」「予防処置」の定義に準じて、予防処置として扱うべきで、「製品の再発とは、同一品番の同一不適合内容の再発をいう。」と、マニュアルなどの用語定義で明確に定義しておくと混乱しないであろう。