1.「型持ち」の型は顧客支給品か?
プレス、ダイカスト、プラスチィック成形などの型で製造するものは、顧客が支給した型でプレス部品、ダイカスト部品、プラスチィック部品を製造する場合と、型を部品メーカーが作り、それを用いてプレス部品、ダイカスト部品、プラスチィック部品を製造して、顧客に納入する場合がある。後者を業界用語で「型持ち」ということがある。
顧客にとっては、専門業者であれば、型まで製作してもらったほうが、管理がしやすい。
ところで、この「型持ち」の型は、顧客が先に型代として支払うから顧客所有物だという解釈がある。しかし、常識的な人は、直感的に、顧客から支給された型と、自社で「型持ち」で作った型を、同じ「顧客所有権」管理扱いとするというのは、何かおかしいと感ずるだろう。
2.型代単独支払いの理由
「型持ち」の場合、部品のほうは納入量に応じて、顧客はお金を支払う。しかし、型は、別に一括支払う。何故だろうか。実は、その理由を知らないで、金をもらったから、顧客所有物だというから問題なのである。
型代を部品単価に織り込むとき、何個で償却するかの計算が必要になる。例えば、金型代が100万円として、それで加工する品物が50万個であれば、製品単価に2円プラスして納入すれば、金型代は別に支払う必要がない。ところが、需要の変動で、顧客は50万個を約束できないのが通常である。例えば、20万個でオーダーが終了したら、1個あたり3円を顧客はさかのぼって追加して支払わなければならない。逆に、100万個に増えたとき、外注は、1個あたり1円、さかのぼって顧客に返金しなくてはならない。そうすると支払い計算が面倒になる。棚卸資産評価も面倒である。だから、支払い簡素化の都合で別支払いにしているのだ。
別支払いの意味を知らない業界慣習の無知の審査員か、支払い計算に関心の無い品証部員は、間違った解釈をしやすい。
3.「型持ち」の顧客支給品扱いの場合の問題点
(1)顧客による検証と支給管理
顧客支給品管理をきちんとやると、顧客に来てもらい、型を検収してもらい、その記録を残し、顧客も金型の支給伝票を発行しなくてはならない。そして、修理の都度、顧客支給品を修正したのだから、これを報告し、記録に残すというshallを満足しなくてはならない。今まで、問題なかったのに、急に、ISO9001:2000のために無意味な書類が増加する。
顧客のほうも、信用して「型持ち」にしたので、型に関心が無い。良い部品を供給してくれればいいのである。立会い検収だ、支給伝票発行だ、修理ごとの報告受領だ、顧客の固定資産だから、棚卸に来なくてはならないなどという手間は、顧客にとって迷惑なことで、顧客満足にならない。ヒマな顧客の担当部門の人だけが、チェックにくるだけで、リストラ対象になりやすい人だ。
型を紛失しようと破損しようと、納期通り、良い製品を供給してもらえば、それで顧客は十分満足で、困るのは、業者だから、当然、型の管理はきちんとやる。顧客支給品にしようとしまいと管理はきちんとしなくてはならず、同じである。ただ、顧客支給にすると意味の無い書類が増加する。
中には、経理的な支払いの都合で、型の支払いが生産を開始してかなり後になったり、生産終了間際になったりする顧客もある。その間、型は誰の所有物なのか。
顧客から資金を借りて、購入した生産設備は、資金を返すまで、顧客所有物管理が必要なのか。資金を返すために、他の顧客のためにその設備を使用するには、顧客の許可が必要なのか。
(2)型設計にたいする製品設計管理の必要性
さらに、大きな問題は、「型持ち」を顧客支給品にすると、その理屈からして、業者は、一旦、顧客に型を「製品」として売り渡したことになる。したがって、型は「製品」扱いとなり、型設計には、「7.3 設計・開発」を適用しなくてはならない。
型代は顧客が支払ったから、顧客所有権であるという理屈は、型設計の管理要求や修理の都度の顧客報告要求まで、一貫しなくては、論理が成り立たない。
牛肉の関税が上がった。法的には、前年度より、あるパーセンテージ輸入が増加するとセーフガードのため、関税が上昇するのだという。しかし、前年度は、狂牛病で異常に輸入が低く、基準値とならない。機械的に法律を適用するには、常識的には無理があるようだ。しかし、法律の本来の趣旨から離れ、文章だけの解釈で機械的に適用している。こういうのを官僚的、お役所的と言うのであろう。
「型持ち」の型の場合も、「顧客所有権」管理を適用するのは、実態から離れ、文字だけにこだわる官僚的な行動と同じである。品質向上や顧客満足とは無関係のムダな世界の話しである。
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