間違っている不適合指摘例 (H15年9月1週号)

1.合否判定基準を決めるプロセスの基準の明確化
中小企業のA社は、ISO9001:2000の「7.1 製品実現の計画」のc)にある「製品合否判定基準」の明確化の要求に対応して、「検査基準書」に、抜取数、検査項目、測定方法、公差を定めて明記し、文書化し、品質課長の審査・承認で文書管理下においていた。
ところが、S審査員は、「これらの判定基準を決定するプロセスの基準がない。」と不適合指摘をした。しかし、判定基準の決定プロセスについての明確化の要求はISO9001:2000にはない。不適合にならない。
S審査員がこれを不適合にした理由は、「検査基準書」を審査、承認する人が変わると、基準が変わるからだという。この理由はナンセンスである。何故なら、プロセスの基準ができても、それはまた、人が作るのだから、その人が変われば、基準も変わる可能性がある。
ISO9001:2000に要求のないことを要求する審査員が根拠とすることは、すべて常識が欠落しているという欠陥を持つ。

2.内部監査の不適合報告書の不適合ゼロ
中小企業のB社では、準備期間で内部監査の練習を兼ねて、2、3回監査を行い、不適合を徹底的につぶしてから、ISO9001:2000システムをスタートした。そして、スタート後に正式の内部監査をし、その報告が審査対象となった。当然、不適合は全部門ゼロであった。
T審査員はその審査記録を見て、「不適合ゼロはおかしい。不適合があるから、これをつぶすための改善が行われ、PDCAが回るのだ。」と言ったという。そこで、管理責任者は、システムがスタートする前の不適合つぶしのメモを見せたら、納得したという。しかし、このT審査員の「不適合ゼロなら、PDCAが回らない。」というのもおかしい。不適合ゼロでも、さらにシステムを向上する改善はあるからだ。それは製品の改善と同じで、現在、品質が優秀であっても、さらに改善を行い、より品質向上を図ることができるからである。
これも常識を外れたナンセンスな論理である。

3.力量のレベル管理の指摘
C社の機械加工工程は、セル方式である。機械化、標準化が進んでいる。ところが審査員は、その工程の作業者の個人的な「力量」の管理がないと指摘した。要するに、個人差があるからレベル管理をせよという意図が見え見えであった(「力量のレベル?」:H14年12月1週号参考)。しかし、標準化が進んで単純化しているラインなので、レベルの付けようがない。第一、個人的なレベルを管理せよなどというISO9001:2000要求はない。企業の工程の内容によって異なる。
自動車の運転は、正規の教習を受け、運転免許を取った人でないとできない。それがISO9001:2000の仕事の力量であり、免許をとってもうまい、下手はある。その管理まで要求していない。もし、タクシーやトラックのような高度の運転技術が必要なら、営業免許のように別の資格を設定すればよいことである。それも、また、うまい下手もある。きりがない。
この間違いの1つの原因として考えられるのは、「力量」という訳語である。環境のISO14001:1996では、「能力」と訳している。両方とも英語はcompetenceである。訳語が違う。「力量」の訳は、「量」が問題である。この漢字は「量目」という使い方があるようにランク程度を数字的に示すようなニュアンスがあるからである。
ランク管理が不要なように、標準化したライン構築をすることが、マネジャーがもっとも関心を持って推進すべきことであり、これが真の品質向上につながる。