A社は、30人くらいの製造業の中小企業である。94年版で重い、大手型のシステムを、コンサルト機関の指導で導入した。内部監査は、毎月であった。そのため、その書類整理に管理責任者は追われた。管理責任者といっても中小企業の場合、日業業務でも中核となっているから、余計な書類整理が増加したことになる。
こわいのは、この無駄な何とかやりくりしてこなしているうちに、これが固定した仕事になり、あたかも高度のシステムを実行していると思い込んでしまうことである。中毒症状となり、正常なビジネス感覚を失うことである。
A社は、2000年版への移行を機に、当社の指導で、システムを自社にあった効率的なものに変えた。従来から、内部監査員は幹部である。毎日のように顔を合わせている。内部監査機能は、毎日のように働いている。だから、正式な内部監査は、年2回で十分であり、かつ、システムも簡素化したので、これに変えた。
年2回というのは、日本でISO9000が始まった頃は、「相場」のようになっていた回数である。それは審査機関の年2回のサーベイランスからきている。サーベイランスの前に内部監査をしておこうということからきていた。だから、A社の年12回は、その相場からみても多い。しかも、実際にやってみて無駄な手間ばかりで意味がない事実がある。
A社の2000年版移行のマニュアルを文書で見た審査員は、内部監査の回数が12回から2回に減ったので、問題としてとりあげたようだ。年2回では、少ないから、12回にもどせというわけである。しかも、内部監査の是正処置の効果確認は、次の定例監査のときに再発していれば、前回の是正処置が効果的でないということが分かるようになっている。すなわち、半年後に、是正処置の評価をしているので、遅いという。
当社の指導では、全部、年2回で全社認証を取得してきているので、回数を増やせという何人かの審査員の指摘や、その「対応が遅い。」という理由も、慣れっこになっている。パターン化している。したがって、それに対する会社側の反論もパターン化しており、その反論でパスしている。大体、shallに、12回せよという要求はない。
最初、反論の根拠にISO本部の解説を引用していたが、古いので、どこから引用したのか忘れてしまった。
要するに
「品質マネジメントシステムが効果的でないからといって、内部監査を強化するような方法をとるな。それは、マネジメントシステムに問題があるのだから、その改善をしたり、各部門マネージャーのマネジメント能力の強化をしたりする方向にもっていくべきである。」
という趣旨であった。正論である。これで対応してきた。
例えて言えば、警察がついていないと、皆、真面目に仕事ができないというのは、警察官を増強しても、真の解決にならない。ダメな警察ISO9000の泥沼に陥るだけである。
内部監査員主導で、自社のISO9001:2000を促進する発想は、警察ISO9001:2000となり、自主性がなく、モラルが低く、企業をマイナス方向に誘導することは明らかである。
ましてや、中小企業は、幹部が監査員を兼任することが多いので、実質は、毎日のように監査しているとも言える。回数を増加せよ、内部監査により品質マネジメントシステムを強化せよ、というのは、形式にこだわって、品質向上の本質を理解できない典型例である。
一種の「バカの壁」である。
しかし、上記の正論を根拠に、年12回はマイナスが多いから、年2回くらいでよいのではないかという逆のアドバイスをする審査員に、今のところ、会ったことがない。これは、不思議である。審査員は、無駄な手間を増加するほうに理屈を考え出すことを、「企業への付加価値の提供」と考えているのであろうか。これも一種の「バカの壁」である。
|