2000年版の理解には、94年版との比較やその経過を知ると分かりやすい。
ISO9001:2000「8.2.4 製品の監視及び測定」の最後のパラグラフに「個別製品の実現の計画で決めたことが問題なく完了するまでは、製品のリリース及びサービス提供は行わないこと。ただし、当該の権限をもつ者が承認したときは、及び該当する場合に顧客が承認したときは、この限りではない。」とある。これを「特別採用」と直結した解説があるが、これはおかしい。これは94年版と比較すると「例外移動」の問題として正確に理解できる。
1.94年版の検証完了前の「例外移動」についての条件
94年版では、「4.10 検査・試験」は、次の3つに分かれて、品質計画で決めた検証が終了しない前の「例外移動(release)」の条件が明記されている。
(1)「4.10.2 受入検査・試験」
「4.10.2.3」に「緊急に製造するために検証完了前に搬入製品を使用(release)する場合」、後でもし不合格と分かった場合、そのロットが明確にリコールできる条件で、「例外移動」を認めている。
(2)「4.10.3 工程内検査」
このb)に「規定された検査を完了しないでも、次の工程に移動(release)する場合」の条件要求がある。後でもし不合格と分かった場合、そのロットが明確にリコールできる条件で、「例外移動」を認めている。
(3)「4.10.4 最終検査・試験」
「品質計画書及び/又は手順書に規定しているすべての活動を問題なく完了し、関連データ及び文書を作成し、承認するまでは、製品を出荷(dispatch)しないこと。」という要求がある。「例外移動」を条件付きでも認めておらず、現実とそぐわないことがあった。
上記のように、94年版の経緯から分かることは、これは「例外移動」のことであって、「特別採用」や「逸脱許可」とは無関係であることである。
2.2000年版での「例外移動」の対応
この「例外移動」を認める条件が2000年版では、「8.2.4 製品の監視及び測定」の最後のパラグラフ、「ただし、当該の権限をもつ者が承認したときは、及び該当する場合に顧客が承認したときは、この限りではない。」に簡潔に明記されているのである。
2・この条項の意味
(1)「中小企業のためのISO9000:ISO/TC176からの助言」(1996年発行)
94年版の解説本であるこの本の「4.10 検査・試験」においては、
「品質計画書で計画されている検査全体が完了する前に、顧客の要求で出荷しなければならないことがあり、例として、食品の劣化を防ぐために、検査結果がわかる前に、顧客の冷凍ストアへの配送があげられている。「例外移動」(出荷dispatch)の場合の例である。
94年版では、規格では最終検査の例外移動は許されないのに、この解説では、顧客要求による例外移動(出荷)を認めており2000年版の先取りした感じである。
この場合、検査結果は後でわかるから、まだ、不適合かどうかは不明。だから特別採用は関係ない。大体、後から、不適合になる頻度が高い「例外移動」は、常識的にありえない。顧客もそんな要求をしない。特採にするような事態は起こりえないのが常識である。
2000年版では、実現計画(品質計画書)では検査終了後に移動又は出荷するようになっていても、例外移動の場合は、当該の権限をもつ者が承認するか、顧客が承認すれば、検査終了を待たなくても工程内移動(release)や出荷(dispatch)は可能という意味である。94年版では、受入検査や工程内検査では、例外は認められていたが、最終検査では、認められなかったという経過がある。
また、「逸脱許可」というのは、「製品実現に先立ち」不良品になると知っている場合の処置である。ところが、「例外移動」はあらかじめ不適合品になると知っていて、移動することではない。基本的に良品の可能性のほうがはるかに高いので「例外移動」可能である。
(2)「中小企業のためのISO9000:ISO/TC176からの助言」2000年版向けの解説
「例外移動」に、上記の食品の例がそのまま、使われていて、説明に変わりはない。
3.組立型製品の場合
材料から一貫してロット生産している部品加工のような場合、「工程管理票」などで、「個別製品の実現の計画で決めたことが問題なく完了するまでは、製品のリリース及びサービス提供は行わないこと。」が1つの帳票で確認可能であるが、組立型の場合、構成部品が多いので、この方式は不可能で、在庫部品は、部品工程を計画通り完成したものとし、組立工程の記録のみで、「決めたことが問題なく完了した。」と苦しい解釈をした。
2000年版では、最終検査の「関連データ及び文書を作成し、承認するまでは、製品を出荷しないこと。」が削除され、「ただし、当該の権限をもつ者が承認したときは、及び該当する場合に顧客が承認したときは、この限りではない。」と緩和されたと正確に理解できる。
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