| あるISO9001:2000規格の解説で、「7.5.2 製造及びサービス提供に関するプロセスの妥当性の確認」について、「ほとんどのサービス業では、プロセスの妥当性の確認が該当する。」とあり、根拠として「事後の品質確認では遅い。食品業界、医療(手術し、気がついたら死亡では困る)、深夜の交通量調査(1回しかできない)などがある。」とある。この例は、間違った解釈を起こす。
1.常識の欠如
あらゆる検査は全部、プロセスの「事後」か「以降」である。当然である。だから、検査で不適合を発見したら、「遅い」。「手遅れ」である。検査の本質的な特徴である。だから、検査は「手遅れ」であるという理由で、そのプロセスの妥当性の確認が必要だとするなら、食品、医療やサービス業など業種を問わず、全プロセスが「妥当性の確認を必要とする」プロセスとなってしまう。また、プロセスを有資格者がやるから特殊工程であるという審査例など、審査の場での混乱例が多い(審査/コンサル体験談コーナー「最近の間違った審査例・その2:H15年10月2週号」参照)。
この点、ISO9000:2000の「3.4.1 プロセス」の参考3に、「結果として得られる製品の適合が容易に又は経済的に検証できないプロセスは“特殊工程”と呼ばれることが多い。」とあり、ここでは、特殊工程が該当する検査(下図のAが該当)は、限定された検査であることが明記されている。

ISO9001:2000の「7.5.2 製造及びサービス提供に関するプロセスの妥当性の確認」における「以降の」とか「事後の」という訳は、以前から予想されたように、こういう誤解を招きやすい(このホームページの2000年版項目別コーナー7.5:「特殊工程の『それ以降』の意味:H14年10月5週号」参照)。
最後にふれるが厳密に言うと量産では、Bは存在しない。
2.具体例の批判
(1)食品
たとえば、食品の大腸菌検査は、サンプルの検査判定が出るまで、2、3日かかることがあるので、そのロットの出荷は、その間、停止される。検査可能であるが、時間がかかって「容易でなく」、全数検査は「経済的」でないからしていない。だから、殺菌釜内の温度と時間のパラメーター管理という工程管理を厳密にする。
(2)手術の失敗例
「手術し、気がついたら死亡では困る」といっても、手術ミスは、手術中か、手術後しか分からない。手術中は、患者の血圧、心拍数などは刻々監視及び測定されている。
最近、ある病院で医者が遠隔操作メスになれないで、手術ミスで血管を切り、目の前で出血が起き、患者を結果的に死亡させ例があるように、これは手術中のミス(作業ミス)であり、検査の問題ではない。このように、作業ミスは、プロセス進行中か、終了時に気がつくことが多い。検査前のことである。検査工程とは別な作業工程のことと混同している。
(3)深夜の交通量の調査例
まず、深夜の交通量の調査は、1回しかできないことはない。何回もできる。一人で調査しているので、居眠りをするかもしれないと予想されるのであれば、調査計画時点で2名つければ、「容易に」検証できる。計画の問題であって、プロセスの固有の質的な問題ではない。
3.権威あるISO本部発行の文書の引用
(1)「中小企業のためのISO9000:ISO/TC176よりの助言」(2000年版対応)
この解説では、Aタイプは「あなたが、あなたのプロセスの結果を『直後(immediately)』に検証できない場合」と解説し、事例として、コンクリートと溶接の例をあげている。
コンクリートの場合は、「サンプルのテスト結果が分かるのは28日後でなので、それまで待てないから、プロセスの厳密な管理が必要で、それにより、通常、後からの検査結果は、満足すべきものであろうし、すべてのコンクリートをやりなおすようなバカ(手遅れ)なことをする必要はないであろう。」と説明している。
溶接の場合は、「破壊検査になってしまうので、(全数検査は経済的でないので)プロセス管理が重要になる。」としている。
さらにサービス業の特殊工程の例として、旅行会社の例もあげ「旅行の手配の検証は、手配のときではなく、顧客が旅行してみて、検証されることがある。」としている。これは、引渡し後にしか、適合性が分からない場合の例である。
これらの説明は、この解説本では、すべて、94年版のときの特殊工程についての説明と同じである。
(2)ISO/TS16949(QS9000の2000年版)の7.5.2.1項の要求
自動車部品のセクター規格のISO/TS16949では、全工程を特殊工程扱いとする要求となっている。すなわち、Bタイプのプロセスはない。
検査には、通常、多くの検査項目があるが、全項目の検査は経済的でないのでしない。また、検査するにしても全数検査でなく、抜取検査が多い(下表参照)。機械部品だと、全寸法の検査をレイアウト検査というが、これは、新製品のサンプル確認のときだけである。
このように、実際的に製品全数の、かつ、全品質特性項目の品質保証=検査は、幻想である。「品質は設計を含めた工程(プロセス)で作られる」という考えで、プロセス管理による品質安定、品質向上が品質保証の決め手である(「ISO9000の検査主義の変遷」:H15年9月4週号」参照)。
プロセス |
プロセスの結果として得られる品質特性 |
検査する項目 |
量産検査数 |
試作 |
量産 |
A |
a |
○ |
○ |
全数 |
|
b |
○ |
○ |
抜取 |
c |
○ |
× |
× |
B |
d |
○ |
○ |
抜取 |
e |
○ |
○ |
全数 |
f |
○ |
× |
× |
|