ISO9001:2000の「6.2.2 力量、認識及び教育・訓練」のd)に「組織の要員が、自らの活動の持つ意味と重要性を認識し、品質目標の達成に向けて自らどのように貢献できるかを認識すること。」とある。
この「品質目標」は、「5.4.1 品質目標」のことか。それとも、「7.1 製品実現の計画」のa)の「製品に対する品質目標」のことか。
1.TWIと訓練
経営学では、有名な「ホーソン実験」というのがある(このホームページの2000年版項目別分類コーナー・6.資源の運用「『力量』とは?:H13年1月4週号」参照)。
この実験が有名になったのは、現場従業員の仕事への参画意識など、職場の人間関係が生産性向上とつながっていることが明らかになったからである。これにより、従業員に参加意識を持たせようとする「提案制度」が生まれた。これが、現在、「品質マネジメント8原則」の3番目の「人々の参画」に反映されている。
この「提案制度」が戦後、日本企業に持ち込まれ、逆に「改善:KAIZEN」として、世界的に輸出されるようになるが、このように、もとはアメリカ生まれである。
さらに、「ホーソン実験」は、職長の作業者への訓練方法にも影響を与えた。今まで、職長が仕事を教えるときに、作業者の覚えが悪いと、作業者のせいにしていた。これは生産性に悪影響を与える事実から、職長の教え方が悪いという考えに変わった。これが後に、企業内訓練(Training
Within Industry:TWI)として体系化される。TWIの基本発想は日本では有名な山本五十六海軍大将の「やって見せ、言って聞かせて、やらせてみて、ほめてやらねば人は動かじ。」と似ている。
このTWIは、第1次大戦のとき、双眼鏡の生産が間に合わず、そのネック工程のレンズ磨き作業の職人の作業を約十工程に分割し、どうしてもコツが必要な工程以外の早期習熟化に効果を出し、増産に成功したという。
このように「訓練:トレーニング」を経営の歴史からみると、企業の第一線業務の訓練が主体である。
2.ISO9000と訓練
87年版のときから、訓練は、ISO9000シリーズの重要な要求項目であった。英語はトレーニング(training)だったが、訳が「教育・訓練」であったせいか、「教育」が中心になり、これに対応するため、最初、外部の品質管理のセミナーへの出席だけを定めていた会社もあった。QC7つ道具などの講座教育が現場の教育・訓練内容の主要な会社もあった。
しかし、製品品質に直接影響を与えるという 観点からすると、むしろ、日常業務の訓練のシステム化が中心となるべきである(このホームページの2000年版項目別分類コーナー・6.資源の運用「教育と訓練の違い」参照)。
3.品質目標との関係
現場第一線の業務の訓練を考えると、ここでは、「5.4.1 品質目標」が関係することもあろうが、主体は、「7.1 製品実現の計画」のa)の「製品に対する品質目標」であろう。
例えば、現場の組付け作業など、その組付けを間違えると最終製品の品質にどのような悪影響を与えるか、その作業の重要性を教えることは、日常、顧客に提供している製品品質の維持向上に重要な役割を果たす。
別な例で、プレス作業を行う新人作業者が図面に示された形状寸法と公差の目標(「7.1 製品実現の計画」のa)の「製品に対する品質目標」に当たる)の達成のため、段取り時、型のチェックの重要性を知ることは、極めて重要である。それは、また、作業者が品質向上への参画意識をもつことにもつながる。
その具体的な、日常生産活動の品質目標は、その職場の長が担当するクレームゼロなどのトップマネジメントに要請するようなレベルの品質目標とは異なる。
この混乱の底にある原因は、トレーニングと教育との日本語訳から来ているようだ。
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