1.T社での指摘と対応
(1)指摘内容
T社はL機関のT審査員によりISO9001:2000の予備審査を受けた。そのとき、審査員から次のように品質会議とマネジメントレビューの関係について不適合ではないが助言を受けた。
「品質会議は、開催は月1回ですが、これが規格で云うマネジメントレビュー(会議)に相当するものであるならば、月毎のレビューに対し、連(続)でシステムの運用状況について報告を受け、レビューされる必要があります。即ち6ヶ月間とか、1カ年間の活動・実績の傾向を捕らえる必要がありますので、月次品質会議の6ヶ月/1カ年間のまとめをマネジメントレビュー会議として持ち、例えば次年度の品質方針や目標等についてレビュー結果を基に設定(変更)することも有り得ます。」
「内部コミュニケーションでは品質会議がありますがその中の第○月度の会議をマネジメントレビュー会議と定めるとはっきりするでしょうし、その時のアウトプット項目や必要な決め事があれば定めておくとよいでしょう。」
(2)T社のクレーム
T審査員の指摘文を見ると、最初は「これが規格で云うマネジメントレビュー(会議)に相当するものであるならば」とマネジメントレビューを「会議」で行うべきだという先入観がちらついている。そして、内部コミュニケーションでは、「第○月度の会議をマネジメントレビュー会議と定めるとはっきりするでしょうし、」とマネジメントレビュー会議の押し付けに転化した。マネジメントレビューの方法の代替案発想がない。会議一筋である。
T社は、マネジメントレビューを品質会議で行うのは、1つの選択肢であり、shallにはない。そして、審査員の推奨する品質会議方式は、真のマネジメントレビューにならない旨、次のようにクレームとして審査機関に反論した。
「マネジメントレビューは年一回4月に年間の傾向を見て行うと品質マニュアルに定めてあります。アウトプット項目やフォローアップ方法は、記録書に記載するようになっています。
審査員は、各部門長が月単位でフォローする品質目標に関する品質会議と、トップマネジメントメントが年サイクルで行う高次元のPDCAマネジメントサイクルの違いを理解されていないようです。」
結果的に、T審査員は他項目でも似たような画一型の押し付けがあり、交替となった。
2.N社での助言と対応
N社でのS審査員の助言もT社と同じであったが、審査員の言う通りにした。このため、社長は部長の日常管理とマネジメントレビューの意味が分からなくなった。社長は私にアドバイスを求めたので、マネジメントレビューのときに、次のような見直し文を添付して、もとのシステムに戻した。
「マネジメントレビューは、年1回の大きなマネジメントサイクルで、経営者が行うものである。当社規模では、例えば、組織の改廃とか、何千万円から億単位の費用がかかるような課題である。
また、各部門の品質目標の進度チェックは月サイクルの部長レベルのマネジメントであり、毎月の品質会議のレベルで行っている。マネジメントレビューとは次元が異なる。この混同が生まれてきているので、反省して明確に分離し、マネジメントレビューは年1回にもどし、最終的には経営者の責任で行い、定めた会議体では行わない。」
サーベイランスの審査では、審査員は、このマネジメントレビューの添付書を見て何も言わなくなり、システムはもとにもどった。
3.審査員の混乱の原因
以上のように、偶然、審査員が異なるのに、同じ「会議によるマネジメントレビュー」のコメントがあった。それは、94年版の頃から、マネジメントレビューを具体的にどのようにやるのか分からず、会議を開き、その議事録に社長がサインしてマネジメントレビュー記録とするという方法が多くとられ、そのため、マネジメントレビュー=会議方式と具体的な方法が固定化したのであろう。他にも方法があるという柔軟な代替発想が消えた。
だから、品質会議が毎月あると、マネジメントレビューを年12回行う企業例もあった。そういう企業は会議の中味を見たいものである。
私は、94年版のときから、社長が英語のマネジメントレビューの意味が分からないと質問があると、逆に「何か最近、最低、数千万円くらいの金がかかることは考えていませんか。」と社長に聞く。そうすると社長からすらすらと具体例が出てくる。だから、会議体になじまないので、会議体を義務付けるシステムは選択してきていない。
4.イギリスの例
イギリスのセドン氏の「こんなISO9000はいらない」(西沢訳:近代文芸社刊)に次のようなあるイギリス企業のマネジメントレビューの失敗例が載っている。
「マネジメントレビューは茶番であった。何をわれわれがしてきたかを討議の後、『皆、今まで、討議してきたことは分かったね。では、それをそのまま紙に書き、サインをしよう。』というだけであった。」
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