中堅企業のK社では、文書の審査・承認欄は次のようになっていた。
この審査という意味は、ISO9001:2000の4.2.3のb)の文書の「レビュー」のことである。
94年版では、レビューは、「審査」と訳されていた。A社は94年版からISO9001を取得しているので、すべての文書は上のように「審査」という欄になっている。これを2000年版に合わせて「レビュー」に変えたら膨大な修正となり、かつ、無意味なことである。
K社では、一応、2000年版のマニュアルの用語定義に、「文書の審査とは、文書をレビューすることをいう。」と明記して修正せず、そのまま、2000年も継続していた。この用語定義は無駄なような気がするが、審査員と無駄な神学論争を避けるために、念のため定義したという。
ところで、簡単な文書は、作成者や承認者が審査を兼ねることが多い。そうなると、ダブって捺印することになるので、A社の文書には、次のように審査に斜線を施しているものを多数あった。
これは、審査の要求無視を堂々と表明していることになる。審査の意味が無知であることも示している。
レビュー専用欄があり、ISO9001:2000の4.2.3のb)で審査(レビュー)を要求している以上、省略はできない。
1999年に日経ビジネスが「こんなISOはいらない」特集を組んだとき、この文書の承認の弊害例として 大手電機メーカーB社の記事があった。それは、ある文書は承認欄が20個あったという。もちろん、それは実態とあっていないから、日常と異なる。しかし、サーベイランス(維持審査)で審査機関が来るときには、規定通り、20個捺印してないと不適合になる。だから、サーベイランスが近づくと、担当者が集まり、架空の書類に、あらかじめ用意した上司の名前と同じ印鑑をみなで手分けして押すのだという。これでサーベイランスをなんとかパスしてきたという。そして、このムダを経営トップは知らないという記事である。20個も押してあったら、その文書について誰が責任を負うのか不明であり、マネジメント不在のシステム設計である。よく、これで、マネジメントシステム審査をパスしたものである。
私は中小企業の場合、この欄の作成にはマネジメントシステムの理解不足からくるムダをなくすため、次の2つのルールがある。
1・文書の審査・承認欄は下記のように審査欄は独立して作らない。
中小企業の場合は、作成者が審査・承認までやることが多いので、3欄式では、ムダなハンコの羅列となるからである。最初から、下記のように最小の2つの欄にする。
2.この上の欄には○○部長とか○○課長とか、部門名・役職名を一切書かない。
「なんのために捺印したか。承認のためである。」ということが分るように機能名だけにする。文書ごとに、誰が、何の目的のために捺印するかは、下の事例のように品質マニュアルの一覧表で定める。ここで「承認者が審査も行う。」という意図を明記する。これにより、捺印のムダの排除だけでなく、この捺印が何を意味するかのマネジメントシステムの基本が明確にする。これにより、組織名や承認のランクが変わると起きる文書欄の修正も不要である。ムダの予防になる。
| 文書名 |
機能 |
作成 |
審査 |
承認 |
原本保管 |
| 訓練計画書A |
管理責任者 |
管理責任者 |
| 訓練計画書B |
各課長 |
各課 |
| 生産準備計画表 |
管理課担当 |
管理課長 |
管理課 |
| 内部監査実施計画表 |
管理責任者 |
管理責任者 |
不適合品報告書
(処理指示内容) |
発見者 |
各課長 |
発見課 |
不適合品対策書
(処置指示内容) |
発見課 |
各発生課 |
発見課 |
| 加工条件書 |
管理課担当
|
管理課長 |
製造課 |
| 検査手順書 |
管理課担当 |
管理課長
|
製造課 |
「承認でなく、事後でもよいから、俺が見たという印を押すところが欲しい」というわがままな「偉い人」がいる場合、社長であろうと、欄外に押すようにしている。発行前の承認のマネジメント責任は明確でなくてはならない。
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