1.「8.2.3 プロセスの監視及び測定」の対象となるプロセスとは?
このホームページの審査/コンサル体験談コーナーの「付加価値のある審査の問題点:H16年4月3週号」の「3.E社の維持審査」で審査員が
「品質目標の年度目標の達成度を毎月評価しているのは、『8.2.3 プロセスの監視及び測定』に含めるべきではないか。」
という指摘をしたことにふれた。これは不適合にしていないので審査員も自信がなかったのであろう。
これは、この「8.2.3 プロセスの監視及び測定」の意味が分かりにくいことが基本的な原因である。審査員にとっても頭の痛いところであろう。これと「プロセスアプローチ」が結びつくととんでもない非現実的なシステムが生まれる(このホームページの審査/コンサル経験談コーナー「キープロセス、プロセスアプローチ、PDCAなどの審査:H15年11月1週号」、「キープロセス、プロセスアプローチ、PDCA審査・後日談:H15年11月4週号」参照)。
あらゆる仕事にはプロセスがある。品質方針を設定するプロセスもある。文書を作るプロセスもある。設計の試作をするプロセスもある。会議を行うプロセスもある。朝礼を行うプロセスもある。現場作業のプロセスもある。事務所の文書をコピーするプロセスもある。
改善のプロセスもある。きりがない。これら文書化して、管理しようとしたのがキープロセスの考えであり、それを推進したのはプロセスアプローチによる大義名分である。
2.E社の審査員に対する会社の回答文
「品質目標は当社が独自に決めた年度の改善目標です。顧客が要求した製品の品質目標のように適合性は要求されません。目的は8.5の改善のためです。そのため「8.5.3予防処置」の要求にそって、当社のマニュアルでは毎月の目標達成状況から「予防処置計画書」が作られ、「予防処置進捗管理表」で個別の改善プロセスの進捗管理が行われています。
「8.2.3」の「プロセスの監視及び測定」は、規格本文に「計画どおりの結果が達成できない場合には、製品の適合性の保証のために、適宜、修正及び是正処置をとること。」とあるように製品の適合性を保証するプロセスです。
改善というのは、すでに製品の適合性を満たしているが、そのプロセスをより向上するためのものです。したがって、改善プロセスが遅れても、製品の適合性の保証上、直接問題を起こしません。したがって、改善のプロセスの監視及び測定は、8.5の問題であって、8.2.3の定常的な状態の維持管理の監視及び測定と異なると思います。
さらに当社のマニュアルには、下表のように、これらのマネジメントのプロセスは、「8.2.2 内部監査」で監視及び測定をすることと明記しています。」
プロセス分類 |
監視手順 |
品質マネジメントシステムのプロセス |
「8.2.2 内部監査」による。 |
| 製品実現のプロセス |
製品実現の計画、顧客関連、購買、計測器管理のプロセス |
「8.2.2 内部監査」による。 |
| 設計プロセス |
「設計日程計画表」による監視。計画どおりの結果がだせない場合には、「7.3 設計・開発」に準ずる修正及び是正処置。 |
| 製造及びサービス提供 |
「工程表」による監視。計画どおりの結果がだせない場合には「6.3 インフラストラクチャー」、「8.3 不適合製品の管理」及び「8.5.2 是正処置」に準じて修正及び是正処置実施。 |
3.分かりにくさの基本的な原因
このホームページでは、ISO9001:2000の分かりにくさの基本的な原因は、継続的改善用のPDCAモデルをマネジメントプロセスモデルと混同して適用している点であることを明確に指摘している(このホームページの基礎知識コーナーの「マネジメントプロセスと製品実現化プロセスは同じか?:H13年1月5週号」、
「品質マネジメントシステムは製造実現プロセスを含むのか?:H14年10月4週号」、「品質マネジメントのプロセスと製品実現のプロセスの関係・その2:H15年2月4週号」、
「ISO19011:2002とPDCA:H15年4月3週号」、項目別分類コーナーの4.1「PDCAモデルの誤用:品質マネジメントプロセスの誤用:H14年5月4週号」、8.2.2の「製品実現プロセスの監視及び測定と内部監査の重複関係:H16年1月2週号」参照)。
その混同が象徴的にあらわれているのが、この「8.2.3 プロセスの監視及び測定」の項目である。一体、ここで監視及び測定の対象となるプロセスとは、何のプロセスなのか?
規格では「組織は、品質マネジメントシステムのプロセスを適切な方法で監視し、適用可能な場合には、測定すること。」とあり、プロセスの監視及び測定の対象は「品質マネジメントシステムのプロセス」と明記している。
では、例えば、食品缶詰の殺菌プロセスの温度や時間の測定によるプロセス管理は、どうなるのか?この食品缶詰の殺菌プロセスは「品質マネジメントシステムのプロセス」になるのか?
現場の食品缶詰の殺菌プロセスの作業は、マネジメント活動なのか?
序文で言っているようにISO9001:2000のマネジメントシステム規格は、製品要求事項とは別でこれを補完するものではないのか?「品質マネジメントシステムのプロセス」を監視するのは、「8.2.2内部監査」ではないのか?
4.名著「中小企業のためのISO9001:ISO/TC176よりの助言」(2000年版向け:和訳なし)
この和訳は半年ほど遅れている。何か、事情があるのであろうか。
この本では、例えば管理責任者は、組織では1名(only one)としているが、JIS独自の参考では複数でも可としている。このような点が何箇所かある。
これでは読者は混乱するだけであるから、訳さないのではないかとうがった見方をする人もいる。
ところで、この名著では「8.2.3 プロセスの監視及び測定」の項目については、独立した解説がない。解説のしようがないのであろうか?次の「8.2.4 製品の監視及び測定」と一緒に解説している。そして、
「この8.2.3と8.2.4の2つの項目は、多くの場合、ダブっており、製品の監視及び測定がプロセスの監視及び測定に適していることもある。特に、これは7.5の製造及びサービスに当てはまる。」
と解説している。
したがって、事例は圧倒的に94版の解説と同じ製造及びサービスの例が中心である。
この項の解説の最後に、「4.1では、すべてのプロセスの監視及び測定を要求している。」とあるが、それについてはたった1例しかあげていない。その1例は訓練の効果測定である。それは訓練のプロセスの効果測定であるとしている。
しかし、これは6.2.2のc)で「訓練又は他の処置の有効性を評価すること」とあるので、当然、内部監査の課題になる。ダブっている。
マネジメントプロセスの監視及び測定と内部監査の関係は、ノータッチである。ここに限界を感じる。 |