契約又は注文の「受諾」と「受注」を間違えるな!
(H16年6月3週号)

1.Acceptanceの訳の危険性
和英辞典で、「受注」には「accept order」と「receive order」とがある。しかし、この2つの意味はISO9001:2000では、大きく異なる。
ISO9001:2000の7.2.2の契約内容のレビュー要求では、レビューのタイミングは、コミットメントの前で、その例として「契約又は注文の受諾前」がある。英語は「acceptance of contracts or orders」である。これを「契約又は注文の受領前」と訳さなくてよかった。
何故なら、常識を知らず、語句論争を好むテニオハ審査員が、注文書が来る前にレビューせよという、非現実的な論争をいどむ原因になるからだ。紳士的な企業側は何を言われているか分からず、困惑する。注文書を「受領」していないのに、レビューは不可能だ。
7.1のc)でもthe criteria for product acceptance という英語があるが、これを「製品の合否判定基準」と訳しているのは正確である。これを「製品の受入れ基準」と訳したら、ナンセンスである。受入れても、検査したら返品することがある。Acceptanceは、合格を意味する。Acceptanceには、そういう意味があるから誤解を招くので気をつけるべきである。ISOで他にそういう誤訳があった。もっとも、ビジネス常識があれば、誤解しないレベルであるが。
7.2.2の要求は、常識的で、「受注活動においては、受けた客の注文(「受注」)をよく念押しし、確認(レビュー)してから、『受諾』せよ。そうしないと客が要求していない品物を作ってしまう恐れがあるぞ。」と言っているだけに過ぎない。
あるいは、「契約書を受け取ったら、サインをする前に、よく契約内容を読んで確認をしてからサイン(受諾)をしなさい。」と言っているにすぎない。

2.レストランの例
レストランで座席に座ると、ウエイトレスが注文を取りに来る。客が口頭で「注文」を言う。「受注」がはじまる。ウエイトレスがメモを取る。そして、それを調理場に伝える前に、再度、復誦して、客に確認する。確認して、「受諾」となる。この流れを下図に示す。レストランは、口頭受注だから、間違った「受諾」が結構多いという。

3.S社の予備審査の間違った指摘例
S社は、部品メーカーで受注生産をしている中小企業である。設計はない。下図の左は、S社の品質マニュアルの「4.2.2 c)」の「品質マネジメントシステムのプロセス間の相互関係に関する記述」に該当する図の一部の抜粋である。
右は、予備審査で、審査員が「不適合」で指摘して修正を求めた図である。


両者の違いは、「7.2 顧客関連プロセス」における製品要求事項の明確化とか、レビューの位置を、製品実現の「受注ボックス」の前に持ってきたことである。
右の図の間違いは、次の2点である。
(1)「7.2」の線の先が製品実現プロセス活動を示すボックスを指していないことである。すなわち、マネジメントシステムが対応する第一線の製品実現プロセス活動(ボックス)がない。これでは、製品実現プロセスを「補完」するマネジメントシステムの相手がなく、相互関係が不明確。もし、審査員がその主張を一貫するなら、受注のブロックの前に「注文受領」というボックスを製品実現プロセスに追加する主張もすべきである。

(2)審査前の図では受注ボックスではじめてS社は顧客の注文を受領することになっている。しかし、審査員の指摘に従うと顧客注文が来ていないのに、顧客要求の明確化とレビューが開始されるという図になる。ナンセンスである。顧客の「注文」がないのに、「受諾」の判断は、全く不可能ことは常識。常識を忘れ、文字面だけに走るテニオハ審査員のおちいり易い個所である。

審査員はこの「受諾」と「受注」を混同したものと考えられる。この両者はISO9001:2000では、同じでないのに。
「受注」のボックスが、先のレストランの例のように、顧客注文の受領から始まり、次の購買手配までの広い意味であることは、これに「7.1」も関係していること、そして、次のブロックが「購買」であることから明らかである。