M氏は、ISO9000の業界では有名人である。いろいろな解説書や、雑誌での記事もある。
審査もしているらしい。
最近、ISO9001の効果的導入ということで本が出た。本屋でちょっと、立ち読みしたら、「『是正』と『改善』を混同することがあるので、その違いに気をつけるべきである。」というような解説があった。
そして、「是正」とは悪い個所を直すことであり、仕事の方法は基本的に変えない。しかし、「改善」とは今やっていることを変えることであり、品質が向上することであるから、両者は全く異なる意味を持つという解説である。
要するに、氏は、効果あるISO9001:2000導入には、改善が重要であると、言いたかったのであろう。しかし、以下のような用語上、基礎的な間違いがある。
何故なら、ISO9001:2000には、「是正」という単独の単語は出てこないからだ。M氏の意味する「是正」は、ISO9001:2000では「修正」と公式に訳している。
「修正」は、ISO9000:2000の用語定義3.6.6にある。英語はcorrectionである。この用語定義では「検出された不適合を除去するための処置」とある。これは、製品の場合、「8.3 不適合製品の管理」のa)「検出された不適合を除去するための処置をとる」というのと同じである。この用語定義の参考2.に「修正として、例えば、手直し又は再格付けがある。」とある。
Correctionに「修正」という日本語を使ったのは正解である。何故なら、全く意味の違うcorrective action(用語定義3.6.5)を「是正処置」と訳しているからである。英語のほうは似ているので、混乱しやすい。そのため、わざわざ、3.6.5の参考3.に「修正と是正処置は全く異なる。」とある。日本語訳では、この意味はピンとこない。英語だと、「correctionとcorrective
action は全く異なる。」となり、この両者は似ている単語なので、間違いやすいことがピントくる。だから、英語では参考3.が追加されたという理由も理解できる。
M氏は、このcorrectionの日本語訳をわざわざ、「是正」としているため、この訳を使うとこの参考3.は「是正と是正処置は全く異なる」となるから、意味は通ずる。しかし、せっかく、日本語でこの混乱を避けるため、「修正」と訳した翻訳者の親心を知らないことになる。
このように、修正correctionは、「8.3 不適合製品の管理」の問題であり、是正処置corrective actionは、「8.5 改善」のうちの8.5.2の問題である。すなわち、是正処置は改善の1つである。だから、日本訳では「是正」という単語は一人歩きしない。必ず、「是正処置」とセットである。
これは、ISO9001関係者にとっては基礎的な知識であるべきだ。
三菱ふそうトラックのハブのトラブルの再発防止のため、設計を変更したとすれば、それは、今の設計を変えたのであるから、改善であり、再発防止のための改善だから「是正処置」である。すでに市場に出回っているトラックのハブ交換などの修理は、「修正(手直し)」である。
3年程前、ISO9001:2000では5.5.2に「管理者層の中から管理責任者を任命すること」とあるのに、M氏は、あるISOの専門誌に「管理責任者は、社外の人の任命が望ましい。」と解説していた。
「中小企業のためのISO9001:ISO/TC176よりの助言」(2000年版向け)では、「管理責任者の責任・権限は、外部の人に与えることはできない。」と明記している。これは94年版になかった。強調されている。
この雑誌の編集長に、社外の人の任命は基礎的な間違いであるので指摘したが、返事はなかった。
M氏は、ときどき、こういう基礎的な間違いをする。影響力のある人だけに、審査の場に、無意味な議論を起こす原因にならないとよいがと思う次第である。
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