2人の経営者の力量の違い
(H16年7月4週号)

F社とH社は、ある大手自動車部品メーカーの部品組立外注である。先月、ともに、B審査機関のM主任審査員の予備審査を受けた。両社は近いので、最初の1日はH社をやり、翌日はF社をやった。

1.H社の審査状況
H社では、社長がやや文書作りが好きな点があり、ISO9001:2000は書類をきらびやかに作るのが高度であるという発想が抜けておらず、管理責任者や幹部との間にギャップがあった。過去、目標管理にヒントを得たのか、会社方針を頂点として、個人まで目標を下ろすという書類を作っていた。しかし、これは文書過剰だけの意味しかないので、管理責任者はISO9001:2000には取り入れなかった。
予備審査のインタビューは社長から始まった。社長は、審査員に品質マニュアルにない、その目標管理の分厚い書類を得意げに持ってきて説明した。文書の多いのが好きなM審査員は、「これはすばらしい。大手カーメーカーの企業賞をもらえる。」と持ち上げた。社長は、そのヨイショに乗せられた。そこで、2人は意気投合し、8時間の予備審査のうち、半分は2人の会話でつぶれた。管理責任者をはじめ、会社幹部は、当然、インタビューがあると思って待機していたが、時間切れで審査員は来なかった。
管理責任者は、帰りに駅までM審査員を送っていったが、途中、「今日は審査の意味がなかった。」と不満を言ったら、M審査員は「脱線したようですね。」とあっけらかんとした返事であったという。

2.F社の審査状況
F社の社長は、ISO9001:2000を取得しても無駄な書類で苦しんでいる企業例を知っているので、簡素化したシステムで認証を得るという姿勢が明確であった。ところが、M審査員は、前日のH社と同じ姿勢で審査を始めた。
まず、ISO9001:2000をとるだけではだめで、効果を出さないといけない、だから、品質だけでなく、納期管理も含めたりして、利益を上げるようなシステムでなければならないと、ホワイトボードを使って講義を始めた。審査では使ってはならないISO9004:2000も持ち出した。
完全にコンサルティング型になった。昼休みに、「経営コンサルタントを紹介してやる。」ということまで言い出した。
そんな際限のない議論をしているので、時間はどんどんたって、本来の審査時間がなくなった。現場にも行けなくなった。
午後、H社の社長に来るように言ってあると言い出した。H社の目標管理をF社にも押し付けようというためのアレンジであったようだ。これでは審査の場ではない。システムブローカーの市場である。
F社の社長は、頭にきた。結局、審査はほとんどなしで時間切れとなった。

3.2社の対応の違い
来週に本審査が近づいてきた。本審査もM審査員が来て、最初、H社をやり、その後、続けてF社を審査するという予定であった。
H社の社長は、自分の考えた重いシステムが予備審査で審査員にほめられたので、大喜びであった。しかし、管理責任者や幹部は不満であった。
逆に、F社の社長は、よくISO9001:2000を知っていたので、このいんちき審査に不満であった。管理責任者や幹部も同じく不満であった。
私に本審査への対応の相談があったので、私はひどい審査員なので、交替を要請することにし、ホテルはキャンセルした。

4.M審査員とこのホームページ
F社の審査のとき、M審査員は、私のホームページを読んでいることを、3度言ったという。そして、「西沢さんの考えには賛成である。」と言っていたという。私のホームページを読んでいたら、こんなでたらめなコンサルティング的な審査をしないはずである。完全に私の考えと反対である。一体、どういう読み方から、こんなでたらめな審査を私が賛成するというのだろう。M審査員は、自動車業界の出身であるが、販売畑だけなので、理解できないのであろう。

5.両社のパフォーマンスの違い
興味あることに、同じM審査員に対し、H社とF社の社長の対応が全く違ったことである。
それは、マネジメント姿勢の違いでもあった。そして、顧客は外注の実績評価を毎月しているが、長年、F社は毎月トップである。しかし、H社は、数段下である。やはり、マネジメントセンスが良いというのは正直な結果を生んでいる。