付加価値審査に必要な力量
(H16年8月2週号)

1.審査と改善提案は別の力量が必要
公認会計士は、企業の会計検査をするだけでなく、企業業績が向上するように改善の助言をしたらどうかということが言われた。その混同の行きつく先が、アメリカの大手監査法人アンダーセンの崩壊である(このホームページの審査/コンサル経験談コーナーの「監査とコンサルの関係が問題化:H14年7月2週号」参照)。
また、監査ができるからといって、企業業績を向上させる効果的な提案ができるとは限らない。要求される力量が異なるからだ。それは、検査員が品質を正確に検査できるから、同時に品質向上について効果的な改善提案ができると誤解するのと同様である。
それを自覚しないで、いきなり、コンサルができると誤解する。
そして、悪いことに本業の「適合性審査」もいいかげんになり、その質も低下させる。

2.付加価値審査を行える審査員の力量
審査員が「付加価値審査」をして、企業側に「成熟したシステム」を助言する場合、別な力量が必要である。下記のような伝統的に企業業績に貢献してきている手法の知識、実戦経験、効果実績をもとに判断した力量を持っていることが不可欠である。なお、下記のIEとはIndustrial Engineering :経営工学の略。

分類
手法名
知識だけ
実践経験有
効果実績経験有
IE基礎

時間研究(標準時間)、作業者工程分析、製品工程分析、ワークサンプリング、動作分析、活性分析、複式活動分析、2つのガントチャート、発注点法、定期発注法、経済的発注量、追番制      
トヨタ生産方式
かんばん方式、同期化、シングル段取り、混合ライン、セル方式(立ち作業、セット流し)、ニンベンのついた自動化、あんどん、5W(5つのWhy)、ポカよけ      
生産管理
MRP方式、予防保全方式、ABC管理(在庫)、負荷・能力管理(山崩し)      
VA/VE
価値指数、ブレーンストーミング法、オズボーンのルール      
会計
財務会計、管理会計、意思決定会計      
行動科学
ホーソン実験、企業内訓練(TWI)、小集団活動      

 

トヨタは、郵政公社の改善に入ったとき、まず、ストップウオッチを持って業務を測定(上記の時間測定)したという。伝統的な時間研究の適用である。サービス業でもIEは改善の基礎である。アメリカでは、病院のIE適用例が多い。

臨床医が、患者に向かって、一般的な医学の知識を講義しても意味がない。患者の診察をして、そのデータに応じて、個別の処方箋を書かなければならない。真に患者の健康を考えるなら、内科だけではだめである。さらに患者の職業、日常生活、DNAの理解がないと自身を持った処方箋はできないであろう。

次のクイズも参考になろう。上の言葉に関係ある人名を下から選んで記号をカッコ内に記入するのである(解答は、次週号で)。
「付加価値審査」を強調したあるISO9001審査員にチェックしてもらったら、全部、知らないという回答であった。もちろん、彼はストップウオッチを持ったことすらなかった。


1.組立部品の互換性(   )、2.科学的管理法(   )、3.バーチャート(  )
4.サーブリッグ(   )、5.ホーソン実験(   )、6.OR(   )
7.MRP(    )、8.管理図(    )、9.TQC(   )、10.JIT(   )
11.コンベヤーシステム(    )、12.価値分析(    )

a. ガント、b.マイルズ、c.メイヨー、d.フォード、e.ブラケット、f.ホイットニー、g.ティラー、h.ギルブレス、i.オーリッキー、j.シュハート
k.ファイゲンバウム、l.大野耐一


なお、トヨタ生産方式とISO9001:2000との関係については、あいち産業情報8月2日発行号(このホームページの著書・研修・記事コーナー)を参考のこと。