美浜事故の点検チェックシート
(H16年8月4週号)

1.原因は点検項目設計もれ?
関西電力の美浜原子力発電所の事故で、破断したのは、パイプ内の流速計の直後部分であるということである。だから、当然、磨耗が激しい部分であることは素人でも予測できる。点検作業は点検チェックシートに基づいて行い、記録しているはずだから、破断部分の磨耗の点検項目もれのようである。しかし、点検項目にあっても点検は目視が通常であれば、予防できたかは、疑問である。事故後、正確な方法(超音波測定か)で計測したら100mmの厚さが磨耗で1mm以下のところもあったという。

2.マネジメント側面の問題
ISO9001:2000的に言えば、誰がこのチェックシート(文書)を設計し、審査し、承認したのかである。ハンコは誰のハンコなのか。チェックシート設計に関する責任者(responsible対応できる人)は誰なのか?その情報がどのマスコミにもない。この問題をそういう視点で見ていない。経営幹部からも「○○君が点検項目については、対応するようになっているので、彼に事情を聞いたら○○であった。」という説明がないようだ。
20年ほど前に、アメリカで同様の破断事故で死者を出しているので、関電、三菱重工、点検外注の3社のなすりあいがあろうと、このチェックシートの設計がしっかりしていれば、これを外注に委譲すれば、実務的に問題ないはずである。
また、その点検項目もれが途中で分かったのに、何故、チェックシートの審査・承認者は、迅速にチェックシートを変更しなかったのか。「責任」とはそういう対応(responsible)姿勢をいうのではないか。辞任したり、あやまることではない。ゴーン社長は、「日本にないのは、マネジメントだけだ。」と言ったそうだが、名言である。また、データ改ざんの体質からチェックシートが形式化、官僚化していたのであろうか。

3.保全設計の問題
保全の基礎知識に、「バスタブ曲線」というのがあり、下図のように、3つの期間に分かれる。初期のとき、故障が多く試運転でつぶす。初期故障期間である。故障が減少して安定した状態の偶発故障期間になる。長く使用すると磨耗故障期間に入る。故障は増大を始める。予防のために点検項目を増加させ、点検方法も変わる。今回は、偶発故障ではない。磨耗故障期間中の問題である。磨耗故障期間用のチェックシートの設計に何があったのか?その責任者(罪を追求する意味でなく、担当する管理者)は明確だったのか?


8月2週号の問題の解答と解説
1.組立部品の互換性---ホイットニー
ホイットニー銃で有名。それまで、部品は相手部品を修正して使っていたものが、公差という考えから、任意の公差内の部品は簡単に組み合わせるようにしたもの。精密機械の性能向上が背景にあり、組立の作業能率や品質向上に貢献した。
2.科学的管理法---ティラー
マネジメントの歴史に画期的な足跡を残す。批判も多い。彼を知らない人はマネジメントシステムの「いろは」を知らないことを意味する。
3.バーチャート-――ガント
我々が、日常、使用している日程表である。ガントはこれにより、軍需品の輸送効率を向上させた。専門的にはガントチャートという。
4.サーブリッグ--ーギルブレス
動作分析の手法。人の作業動作は18の要素からなるとし、その記号体系をサーブリッグという。サーブリッグは、ギルブレスのスペルを逆にしてつけたものである。彼の家族生活は無駄がなく、戦後、「1ダースなら安くなる」というハリウッド映画にもなった。夫婦で共同して子供を10人作り、家族で1ダースとなるので安く買えるというわけだ。
5.ホーソン実験---メイヨー
ウエスターンエレクトリック社のホーソン工場で、ハーバードスクールのメイヨー教授が行った実験。職場の人間関係が生産性に影響を与えることを見出した。これから、提案制度などの従業員参加のシステムが生まれる。品質マネジメント8原則の3番目の「人々の参画」の歴史的な原点である。
6.OR---ブラケット
Operations Research(作戦計画)の略。第2次大戦では戦術に学者が参加した。戦争が科学になった。その事例が多く紹介されている。それらの学者は戦後、民間経営の数学モデル作りに参加し、多くの改善を行った。
7.MRP---オーリッキー
Material Requirements Planning(材料所要量計画)の略。IBMのオーリッキーらが開発。現在の経営マネジメントシステムのコンピュータ化の基礎をなす。
8.管理図---シュハート
これもウエスターンエレクトリックにいたシュハートが考え出した手法。不良を早期発見するためのものである。QC7つ道具の1つである。
9.TQC---ファイゲンバウム
TQCは、最初、GE社の品質保証部長のファイゲンバウムが開発したシステムである。別にジュランも有名。日本で有名になり、アメリカに逆輸出。アメリカではTQMに変えた。
10.JIT---大野耐一
Just In Timeの略。トヨタ生産方式の別名。開発者の名前から大野システムとも言われる。
11.コンベヤーシステム--ーフォード
T型フォードの組立にコンベヤーシステムを導入し、生産効率を画期的に向上させた。
12.価値分析---マイルズ
VA(Value Analysis)のことで、GE社の資材部長のマイルズが開発した。後に、国防省の軍需品の改善に使われ、Value Engineering VEとも言われている。

上記は、産能大の通信教育・生産士コースからの抜粋である。