1.7.2.1の製品要求事項に関する明確化の2つの解釈
N社(製造業)の審査で、審査員が「7.2.1 製品に関する要求事項の明確化」の審査の際、「顧客がN社に対して、何を求めているかを顧客よりもれなく聞くために、N社があらかじめ確認すべき内容の明確化」をしていないと指摘したという。要するに、この項目は顧客の要求事項の明確化でなく、N社が顧客に聞くべき内容の明確化だというのである。
これはおかしな解釈である。規格は、顧客の製品要求事項の明確化を7.2.1でもとめている途中の方法(企業によって異なる)がどうあれ、顧客の要求事項が明確化されていることを要求しているのである。
例えば、下の帳票は、顧客Yから部品を支給され、これを組付けるだけの外注企業Fが、顧客Yからの製品要求事項を明確化するための帳票である。しかし、この帳票がいくらあっても、きちんと個別に記入して、明確化しないと規格の要求を満たすことができない。
生産準備計画表 |
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品名・品番 |
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量産開始納期 |
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分類 |
項目 |
確認日 |
確認者 |
処置 |
備考 |
| 顧客支給文書 |
図面 |
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| 製造工程計画書 |
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| 工程フロー |
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| QC工程表 |
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| 作業標準書 |
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| 製品検査基準書 |
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| 包装仕様書 |
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| 支給設備・治工具の有無 |
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| 支給通い箱の有無 |
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| 当社技術文書 |
項目 |
作成者 |
予定日 |
確認 |
| 組付工程表 |
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| 検査図 |
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| 工程概要(検査工程を含む) |
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| 外部委託工程の有無 |
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おそらく、審査員は、上記のような帳票を要求したのであろう。しかし、それは、規格にそった審査でない。企業が個別に決めるべき手順でありコンサルになっている。
カタログ品を製造・販売している会社で、カタログを準備することは、顧客の製品要求事項の明確化の準備としては効果的であるかもしれないが、個々の顧客がどのカタログ品を指定したかを明確に確認する(例えば、個別の顧客オーダーに選択されたカタログ番号を明記されていることの確認)まで、きちんと追いかけないと立派なカタログが死ぬ。
名解説書「中小企業のためのISO9001:ISO/TC176よりの助言」では、7.2.1と7.2.2をまとめて解説しているが、要約として「あなたは顧客要求を確実に理解しなさい。」とある。7.2.1の要求のポイントは個別の「顧客要求の明確化」であり、こちらの「準備態勢の明確化」ではないことは明らかである。
2.本来の審査のあり方
この審査では、審査員は、「7.2.1の要求は、顧客の製品に関する要求事項を会社側が明確に理解することですから、これについては、サンプルを見た範囲では問題ありません。しかし、確認する項目リストを事前に用意しておくと効果的ではないですか。これは「7.2.1の要求には規定していませんので、これは私の意見であり、検討は貴社で参考までに行ってください。」というべきであった。
しかし、それにしても、よくこのように常識では考えられない解釈が次から次に出るものである。不毛の審査であり、議論である。
3.かんばん受注に7.2.1の適用?
K社は自動車部品を製造している中小企業である。顧客より新規の部品の注文が来ると、金型や機械加工のソフト作成を行い、試作し、顧客の確認を得る。最後に承認図を得る。このようにして、顧客の製品要求事項が明確化される。これが終わると、後は品番と一定の数量だけを指示した「かんばん」受注である。「かんばん」が来るたびに7.2.1のa)からd)の確認は不要である。7.2.2のレビューだけで十分である。
ところが来た審査員は、建設業の出身でプロジェクト型の経験しかなかった。プロジェクト型の場合は、顧客の注文の都度、7.2.1の確認が必要である。その経験から、「かんばん」受注も7.2.1の明確化が必要だと言い出した。繰り返し生産の典型である自動車部品の製造になじめないようであった。会社側は業界を知らないのではないかと反論したので問題にならなかった。
審査員の仕事も大変であるが、それだけに企業も高い金を出しているのである。勉強が必要である。
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