H社の是正処置のシステムは、このホームページの「2000年版項目別分類」コーナーの「8.3 不適合品の管理」にある、
「不適合品報告書と訓練報告書の様式の代替案:H15年2月1週号」のD方式である。
D方式をとった理由は、不良品はすぐに処理が要求されるが、原因がすぐにわからないことが多いので、機動的に対応するため、分けたほうがよいと考えられたからであった。
ところが、そのうちに、これを1つの帳票に統一し、B方式に変えた。理由は不適合の原因がすぐに分かるので、帳票を分ける必要がないとのことであった。これは、実は、原因についての無理解が露呈したものであった。
H社は、顧客から自動車部品の支給を受け、組付けを行なう。だから、例えば、違った部品を組付けたりすると、組付け品の不適合品になる。なるほど、原因は、「部品間違い」で、すぐ分かる。しかし、これはISO9001:2000のいう原因でない。
ISO9001:2000で原因が要求されるのは、「8.5.2 是正処置」のためである。その原因を取り除くと再発防止になるからである。「部品間違い」の原因では、取り除く具体的なアクションが分からない。「どうして間違えたのか。」をさらに追求しないとアクションにつながらない。だから、原因はすぐに分からないはずなのである。すぐわかるというのは改善の基本を知らない人が言うことである。
停電したとする。原因はヒューズがとんだからだ。原因はすぐ分かる。しかし、これで原因が分かったとして、対策としてヒューズを交換しても、とんだ原因を調べ、原因を除去しないとまた、ヒューズはとぶ。
トヨタ生産方式では、「原因」と言うと誤解し、効果的な改善につながらない原因レベルで満足するので、「真因」と言って区別する。
いい加減な原因で手を打つと再発する。真因までつかみこれを除去しないと再発する。だから、真因追究のため、トヨタ生産方式では、現場にとび、具体的に5回「何故」を繰り返す(このホームページの「『ザ・トヨタウエイ』とISO9001:2000:16年10月2週号」参照)。
「部品間違え」の例では例えば、現場で次のような問答が生まれる。
「@のWhy:何故、部品Aを部品Bと間違えたのか。」「同じ箱に部品AとBがあったからだ。」
「AのWhy:何故、同じ箱にA、Bが入っていたのか。」「中央に仕切りがあり、混入しないと思ったからだ。」
「BのWhy:何故、仕切りが合ったのに、まざったのか。」「そのとき、Bの数がいつもより多く、仕切りが倒れたからだ。」
「CのWhy:何故、仕切りが倒れたのか。」「仕切り材が薄かったからだ。」
「DのWhy:何故、仕切りが薄かったのか。」「仕切り材をテストしなかったからだ。」
この例の場合、改善は、Cの段階で「仕切りを厚くする。」でもよい。最初から同じ箱に絶対、違った部品を入れないというのもよいであろうが、箱数が増大し、手間が増えるかもしれない。
しかし、この問答のように、これを現場でやるとなると、過去を思い出していくので「真因はすぐにわからない。」
H社の同業のある企業で、得意先から部品の挿入方向が異なる組付け品が1個返品になった。「原因」は簡単である。挿入ミスである。しかし、「何故、その品物だけ逆方向に挿入したのか。」がわからないから、これは「真因」でない。
納入していない在庫が物数千個あったので、1日間かかってとりあえず、全部選別したが、そういう不良品は発見できず、結局、逆挿入品はその1個だけであった。さあ、何故、この1個だけ挿入方向が逆だったのか原因が分からなくなった。最終的に、推定で、挿入方向逆の不良品のサンプルを1個掲示してあったものが、混入して納品されたのではないかとなった。
この推定原因をうけて、対策は、掲示している不良品サンプルはすべて荷札をつけ、万が一、混入してもすぐ分かるようにした。推定であるので、これが効果的であるかはわからない。時間がたって、真因が分かるかもしれない。
この場合、不適合としては単純であるが、その真因追求が、選別で時間をとられ、選別しても真因が分からず、推定の真因で対策を打つまで3日間くらいかかっている。しかし、できた製品の選別(不適合品の処理)は、即日、終わっている。
原因がすぐわかるという考えは、ISO9001:2000の不勉強、トヨタ生産方式の真因や5Wへの無知からきている。こういう考えでもISO9001:2000は取得できるが、効果は期待できない。
2000年に、イギリスに行ったとき、イギリスのISO9000の主任審査員が、2000年改訂で8.5.2のb)にある「不適合の原因の特定」は、「不適合の『真因』の特定」とすべきだったと反省していた。彼はトヨタ生産方式に精通していた。
イギリスでも、表面的な原因ですませている例が多いのであろう。
H社の「原因はすぐ分かる」という考えから、その是正処置は、具体性のない、効果のない内容であることは容易に想像できる。企業の業績向上に貢献できるISO9001:2000ではない。 |