審査員のGood point が会社ではBad point
(H16年11月1週号)

M社は、60人くらいの小企業で、自動車部品顧客の大手自動車部品メーカーYの外注で、部品支給を受け、これを組付けて納品している。
ISO9001:2000の本審査のとき、研修で審査員の受入れを依頼された。審査機関側が審査には口出ししないと言うことなので、その研修生を受け入れた。
M社は、Y社の品証部が強制する書類過剰なシステムでISO9001:2000をとると、無意味な維持コストにより、経営損失となると考えた(このホームページの審査/コンサル経験談「自動車部品中小外注業者の今後迎える試練:H16年5月2週号」参照)。
そこで、ISO9001:2000のシステムは独自のシステムにして、無駄と思われる書類やその管理は、自社の管理外の外部文書として扱った。外部文書には中には意味のない強制された掲示も含まれていた。(このホームページの「基礎知識」コーナーの「ISO9001の負のダウン・スパイラル:H15年12月3週号」参照)。

審査が終わって、その研修生の感想が、M社に観察事項として、文書提出された。本来、これは失礼な話である。研修生の名前で、会社に報告書は出すべきでない。主任審査員が検討して、正式な審査員の名前で提出すべきである。

愉快なのは、このようにM社が無駄としてISO9001:2000から除外し、外部文書で掲示されていたものを、この研修生は、good point として、観察事項に述べた点である。見方が全く逆である。審査員が、現場知らずのパラダイムをもっていることが明らかであり、それを指摘しないで文書で会社に提出した主任審査員も同じレベルであることが明らかになった。以下に、それを示す。

番号
ISO
番号
審査員のほめ言葉
M社の逆な考え
1
5.5.3
異常時の対応手順など、工場掲示物で品質に寄与する情報が一般の作業員の目に入りやすい環境が作られていた。 これらの掲示文書は、顧客よりの強制的な掲示であり、内容は抽象的で具体性がなく、内部コミュニケーションになっていない。外向けである。作業者は仕事に忙しいので下向きであり、読んでいない(このホームページの「『異常』漢字の掲示の異常:H16年9月1週号」参照)。M社では、無駄であるので、ISO9001:2000では、外部文書扱いとして掲示し、社内の文書管理から除外した。
2
8.2.4
画像処理による自社開発の自動検査機で組付け不良の全数検査を行っていた。これはすばらしい。 画像処理による自動全数検査機は、すでに産業界では約20年来の歴史があり、驚くほどの革新的なことではない。したがって、この観察事項は研修生が産業界は素人であることを示す。それに、マネジメントシステム審査文書なのに、専門外のハードウエアの評価をしており、マネジメント審査の性格を知らないことにもなる。むしろ、この自動検査で発見された不良品の是正処置のマネジメントを審査すべきだ。
3
8.3
発生した不良品をさらし台という形でどの不良が多いかすぐ分かる形にしている。これは不良減少に役立つすばらしい活動である。 これは、電気・自動車産業では、小企業でも古くから行われていることである。これも顧客の強制。M社では、不良品を見るだけで不良品が減少するという感覚は異常であると考えている。これは顧客の品質保証部の強制である。不良品を見て、真因はすぐに分からない。不良品の減少は、M社では、真因をつぶす技術的な改善なしでは確実に達成できないと考えている。この研修生はそれを理解できないのか、レベルの低いことに感動している。
4
6.2.2
私の作業宣言という形で、一人一人の重視している課題を明確にして掲示している。これは従業員を動機づけ、目標を明確にするすばらしい活動である。 M社の作業は、簡単なルーチィンワークである。したがって、一人一人の課題は、「作業をきちんとやる」というような同じ内容で、達成の測定不可能な精神論である。顧客の品証部門の強制で書かせられて掲示しているだけで、M社はあまり重視していない。効果もないのでこれも外部文書扱いとしている。研修生はデミングの14原則を知らないようだ(このホームページの「新着ニュース9月4週号『目標管理とISO9001:2000』」参照)。
5
8.5
各ラインごとの過去(数年前から)のクレームを掲示し、作業員に注意を呼びかけている。これはすばらしい活動である。 M社は、過去のクレーム掲示よる注意は、再発予防に効果的でないと考えている。掲示を読まないと再発の恐れがあるのは、すばらしいどころか、無駄で危険である。技術的な対策(是正処置)はどうなっているのか。クレームの前と後での作業のカイゼン変化を作業者は知っているのか。その方が重要である。M社は、顧客の要求で掲示しているだけで、これも外部文書扱いとしている。

 

こうして、また、机上論の「ひ弱な」審査員が養成されていく(このホームページの「新着ニュース10月3週号:ガチンコ審査員・コンサルタント・品証部員はどこに?」参照)。

この研修生は、世界的に有名な日本の製造業の品質向上を支えてきた「カイゼン」活動に無知である。それを先輩が教えていない。先輩も無知なのであろう。ISO9001:2000の審査員になる前に、審査相手の企業人と対等に議論できるくらいのビジネス常識を勉強すべきであろう。「文武両道」からすると、文武ともに落第である。