S社のISO14001予備審査状況
(H16年12月1週号)

1.S社の業種
S社(従業員約20名)は事務所だけである。設計はするが、工場はない。顧客の製造ライン中に小型の装置を設置するが、すべて外注で作った部品や大手メーカーから購入した標準部品を現地に直送し、そこで現地で組立業者をやとい、監督して設置する。
だから、環境影響が極めて少ない業種である。

2.ISO14001:1996の審査
S社は、すでに管理規定ゼロで、ISO9001:2000を取得しており、ISO14001をこれに統合して、マニュアルも「品質・環境マニュアル」として1冊とし、管理規定はゼロである。
審査機関は、ISO9001の94年版のときから、L審査機関である。だから、ISO14001の予備審査も同機関に申請した。審査には、K主任審査員とM研修生1名が参加した。
審査で指摘があったのは、下記のように、規格に要求がないものが多く、かつ、研修生まで、文書でコメントを直接、S社の管理責任者に提出する始末であった。
S社は、L機関に下記のように対応表を作り、クレームとして審査部長に提出した。
なお、表中の略号の「G:グレード」、「O:観察事項」、「I:改善事項」、「N:不適合」をそれぞれ示す。

K審査員指摘対応表
番号
審査員指摘項目
G
当社対応
理由
1
法規制の適用法規一覧が作成され、出版物も保有されているが、これらの改正の最新版入手手順を明らかにする必要がある。
O
修正不要 マニュアルに管理責任者が2ヶ月ごとに行うと明記。車に乗って区役所の環境管理課に行くというような手順を書くのであろうか。手順書要求のShallがなく、当社の業態、規模からして過剰な手順書要求である。
2
運用管理で、現地工事を含む管理基準が不備で、例えば下記について早急に基準を見直す必要がある。‐現地工事と営業所の排出物の法律に順じた排出管理、収集運搬、中間処理業者との委託契約の必要性‐工事場所、工事内容(新設、撤去、修理)による排出物管理の多様性に対する対処法。‐フロン回収破壊法に関する手順
I
修正不要 当社は廃棄物を大量に出す建設・解体工事でなく、顧客先の工程の一部に小型装置を新設する据付工事である。既存施設の解体廃棄物は顧客が処することもある。審査員の指摘はこの実態に対応せず、現実的でない。廃棄物の多様性の例としてアスベストをあげ、当社はそういうケースはないという説明に対して、「万が一ありえる。その場合はどうするか。」という。万が一を言い出せば、放射能物質まで発展する。審査にならない。なお、工事で発生する産業廃棄物は認定業者により処理し、マニュフエストを取得しており、かつ、大量廃棄はないので、著しい環境側面として特定していない。フロン処理も認定登録業者に依頼書で行う旨、マニュアルでは明記してある。これも、過剰な手順書作成要求である。
3
設計、購買、工事について、環境配慮型、保全型設計、有害物質の排除、工事現場の環境影響に対しての取組みは現状では全く見られない。環境方針が正しく受け止められ逸脱していないことを確認する必要がある。
I
修正不要 環境配慮型、保全型設計など、規格のどのshallを指摘しているのか、不明。また、エビデンスがなく、根拠のない指摘であり、マネジメントシステムとして対応のしようがない。当社が環境汚染業者でないのに、それと同じレベルの管理をしないから、まったくでたらめの管理をしているという審査員の個人的感情論となっている。
4
マニュアル8.2.2では現地工事(Installation)について内部監査を実施する頻度、サンプリング数が規定されていない。監査の実施は記録されていない。
N
修正不要 8.2.2の監査は工事監査でなく、マネジメントシステム監査である。これは年2回とマニュアルに明記されている。工事のマネジメント監査は、産業廃棄物の処理業者の選択及びそのマニュフエストの取得というマニュアルに定められている活動の監査のことである。したがって、全工事が対象となり、事務所にいる現場代理人のヒアリングと業者のマニュフエストの記録確認で十分であり、監査記録もある。わざわざ、監査のため、現地まで行く必要はない。
2日目1

すべての工事を確立したプロセスに基づいて管理するための基準の整備が望まれる。
O
修正不要 基準は現在で十分と考える。審査員も現場で現場代理人にヒアリングし、適切に管理を把握していたと評価している。当社はマニュアルにある通り、当社の規模、業種の特徴にそって、効率的なシステムを設計し、文書化し、実行している。
2
工事における顧客及び協力会社への確実な周知を図るために上記の基準と同様に基準化が望まれる。
O
修正不要 顧客との関係は、どのshall要求にあるのか不明。マニュアルでISO9001:2000の購買と同様、処理業者の認定基準、その依頼方法を明記している。

上記の表に、次のような文を追加した。

「総体的に、K主任審査員は、当社の業種の特徴や規模を無視した詳細な文書作成要求が多く(今度の2004年改訂版ではISO9001:2000と同様、簡素化した文書化の考えが記載されるとのこと)、かつ、規格のどのshallにそった指摘なのか、不明確です。本審査での改善を期待します。
なお、研修参加のM氏の審査報告書は、貴審査機関内部間の報告書であり、正式な審査員資格のない、同氏の文書を直接、当社当てに提出するのは審査のマネジメント上、軽率と思います。主任審査員が当社と正式に対応すべきです。したがって、当社は、研修員であるM氏の報告書は受領しないことにして扱っています。なお、本審査での研修生の受入れはお断りします。」

要するに、K主任審査員は、S社の簡素化したマニュアル(管理規定ゼロ)にぶつかったのが初体験だったのであろう。書類過剰がレベルが高いというパラダイム(このホームページの「基礎知識」コーナーの“2つの違った品質保証のパラダイム(paradigm):H15年3月1週号”参照)を持った審査員には、カチンときた。そこで、書類を減らす屁理屈をならべたようである。しかし、それは逆に、S社からクレームとして返ってきてしまった。
S社は、ISO9001:1994でも、ISO9001:2000でも同様な姿勢で簡素化したシステムで認証を得ているので、対応は慣れていた。


結局、無修正のまま、1ヵ月後にK主任審査員の本審査を受け、不適合はなく、認証を得た。