品質方針に関する要求の解釈
(H17年2月4週号)

G社は、ISO9001:2000の取得を進めており、S審査機関により文書審査まで来た。
文書審査で、「品質方針の本文中に品質目標のレビューのための枠組みを与えるという言葉がない。」と指摘された。管理責任者は、これは、おかしな指摘であると思った。

たしかに、おかしい指摘である。
ISO9001:2000では、「5.3 品質方針」について、a)からe)までの5つの要求がある。この5つは、品質方針に関する要求であり、全部、品質方針の文章に書けという要求ではない。
品質方針の本文に直説関係するのはa)とb)だけである。特にb)は「品質方針はーーーーを含む(英語でinclude)。」と、明確に「品質方針の文章に含める」ことを要求している。
問題は、c)である。これは「品質目標の枠組み提供する(英語でprovide)」とあり、「含む」がない。「提供する」という意味は、品質方針と品質目標の関係を示したものである。品質方針は「提供者」であり、品質目標は「提供先」である。だから、「提供者」である「品質方針」の文章に「提供先は品質目標である」と書くのはおかしい(このホームページの「2000年版項目別分類」コーナーの「5.経営責任」の「掲示された品質方針の内容:H15年4月4週号」参照)。

大体、品質方針は、文字通り「ポリシー」である。経営の品質についての確固とした「経営理念」をうたったものである(このホームページの「2000年版項目別分類」コーナーの「5.経営責任」の「品質方針の毎年の変更?:H16年12月5週号」参照)。
日本語的によく「あいつにはポリシーがない。」ということがあるが、これは一貫した理念がなく、ふらふらしていると意味である。

そのポリシーに、実務的な運用を含めるというのは、この基本的な常識が欠如していることを示す。「ポリシー」の意味に対する常識のなさが根底にある。この常識が審査側にないと、無意味な「言葉尻」をとらえて、G社にあったような不毛な審査となる。

なお、これは環境のISO14001:2004、労働安全衛生のOHSAS18001:1999でも同じである。
ISO14001:2004では、「環境方針」について、a)からg)までの7つの要求があり、b)とc)の2つに「含む(英語でinclude)。」に要求がある。他には「含む」がない。
OHSAS18001:1999では、「労働安全衛生方針」について、a)からg)までの7つの要求があり、b)とc)の2つに「含む(英語でinclude)。」の要求がある。他には「含む」がない。

環境方針も労働安全衛生方針も、d)からg)は、「方針」の運用を要求している内容である。

したがって、品質マニュアルでは、次のようなモデル例が考えられる。

5.3 品質方針
  (1)方針の内容
  次のように、当社の経営方針にそって品質方針を定める。

品質方針

顧客の要求に適合した製品を顧客に提供し、

また、品質マネジメントシステムの有効性の継続的な改善を行なう。

(2)品質方針の運用管理
  a)品質目標への枠組み提供
品質目標を設定及び見直しのときの枠組みを提供する(この項の「5.4.1 計画」参照)。
b)全社員への周知徹底
各部門での毎月の部門長よりの説明会、職場での掲示により全社員に周知する。
c)レビュー
社長は、マネジメントレビューのとき、適切性の維持のためレビューを行う。

5.4 計画
5.4.1 品質目標の計画 
  社長は、上記の品質方針の枠組みに基き、これを具体的に実行するために、毎年度始め、年間品質目標を「品質目標計画書」に部門ごとに部門階層段階まで定める。この品質目標は、製品要求事項への適合に必要なものを含み、その達成状況が判定可能であるように定める。この計画書は、部門長に送付され、指示される。

 

環境方針、労働安全衛生方針でもポリシーそのものの要求と運用管理の要求を明確に区別するのは同様であり、この明確な区別により、はじめて、形式的でない「正しいポリシー」が設定できる。