| 2月18日、東京で品質工学第1回のフォーラムが日本規格協会の主催で開催された。
午前10時から、午後5時まで行われ、会場は満員であった。
事例発表も、アルプス電気、日産自動車、ツムラ、セイコーエプソンと4つあり、かなり具体的にその適用例を述べていた。
午後に品質工学の創始者である田口玄一氏より1時間ほど、講演があった。
ここで氏が強調されていたことは、品質工学の基本的な考えは、個々の専門技術でなく、設計者に対して、経営がどのような設計課題を与えるかのマネジメントがポイントであるという点であった。
例えば、アメリカの自動車会社のエンジン設計で、設計者は投入されたガソリンをいかに回転トルクの増大にするか基本機能にしているのに対して、田口氏はエンジンの基本機能は「化学反応」とした。そうしないと設計評価のときに、顧客の立場に立って有毒ガスNOxなどの発生を評価できない。品質工学では、いわゆる、基本機能に基づいた設計者への戦略的課題設定が重要であるという説明であった。これは、設計担当者がやることでなく、マネジメントがやることである。
製品の機能分析が中心になるのは、古典的な方法としてはVA(価値分析)あるいはVE(価値工学)がある。製品を形状や性能でなく、基本機能を分析する。それを「名詞」+「動詞」で表現する。先のガソリン・エンジンの例では「ガソリンを化学反応させる」となる。
1960年代、「ワークデザイン」という手法がアメリカから導入された。私は、これを生産性本部で学んだ。これも製品やプロセスの機能分析から改善を開始する。
私は、当時は、アルプス電気の生産部門にサラリーマンとしていたが、会社の製品の基本機能は何かを考えた。当時、アルプス電気は、回転式のテレビチューナーやロータリースイッチなどの電子機器の操作関係の部品を作っていた。
私は、そこで、顧客が要求する機能は「顧客の電子機器への操作意志を電子機器に伝えることである」と定義した。田口氏の考えでは、これで設計戦略を進めるべきであろう。しかし、この考えは当時のアルプス電気の経営者の技術開発の基本戦略とはならなかった。
当時のテレビは、リモコン操作でないから、一々、テレビに近づき、ボタンを回転させなくてはならない。4チャンネルから12チャンネルに行くには、5,6,7,8,9と回していかねばならない。そのうちに、回転しないでタッチで直接、意図するチャンネルに切り替えができるようになった。そして、ついに、リモコン時代である。アルプス電気は一時、ロータリーチューナー製造の大自動化工場を作ったが、それは短期間で陳腐化した。
もし、製品戦略を推進していたら、市場の先手を取って、もっと拡大したであろう。
今回のフォーラムでは、その点で、顧客の立場に立った製品の戦略的な機能分析を中心とした改善例がなかった。
アルプス電気の改善発表もあったが、開発のスピードアップの改善例であった。アルプス電気の開発の中心は品質のよい金型製造である。田口玄一氏は、かって、型による加工プロセスの基本機能は「転写」であるとした。
このアルプス電気の事例発表にも、基本機能からの設計的な戦略による画期的改善内容はみられなかった。
田口氏の考えは外国では「タグチメソッド」として、日本より有名であり、氏は日本人では3人目にアメリカの自動車殿堂入りをしている。
今のISO/TS16949の前身であるQS9000の初版では、規格に設計者の必要な教育タイトルとして「タグチメソッド」があったくらいである。
日本企業の多くは、評価が下手である。外国で評判が出てから逆輸入が多い。
日本規格協会では、新理事長を迎え、これからは品質工学を強力に普及推進していくということで今回、このフォーラムを開いたという。
ところで、一般的に、日本のISO9001の審査員は、品質工学は常識で学び、経験しているのだろうか。このフォーラムには参加しているのだろうか。
品質は書類で作られるのでなく、顧客の立場に立った製品やプロセスの設計戦略で作られるという品質工学とは世界が異なるのかもしれない。 |