審査機関のパートナーシップの問題点
(H17年5月4週号)

1.パートナーシップと付加価値審査
企業側とパートナーシップをうたう審査機関が多い。これは、付加価値審査と似ている(このホームページの「審査/コンサル体験談」コーナーの「4.審査・コンサル一般論」の「アイソムズ」04年12月号特集:適合性審査とその付加価値)参照)。だから、付加価値審査と同じ問題点を持つ。
ISO9001:2000の規格への適合だけの審査(適合性審査)でなく、企業にプラスとなる提言を審査に含めようというものである。審査とコンサルティングの合体である。
適合性の審査だけだと、敵対関係にあるようになるので、審査も企業のプラスになるために行うのだから、パートナーであるという理屈である。
しかし、これはアメリカの大手監査法人であるアンダーセン社がエンロン事件の不正で崩壊したように、監査とコンサルとは一線を画すべきであるという教訓がある。これはISOの審査でも同じである(このホームページの「審査/コンサル体験談」コーナーの「4.審査・コンサル一般論」の「監査とコンサルの関係が問題化:H14年7月2週号」参照)。

2.三菱ふそうの問題と審査機関
昨年の5月30日の読売新聞では、企業と審査機関の観点から、三菱ふそうの問題をとりあげている(このホームページの「品質・環境社会問題」コーナーの「三菱ふそうのリコール問題とISO9001:2000:H16年6月2週号」参照)。
概要、次のような記事である。

三菱ふそうの欠陥隠しはマネジメントシステムの問題なので、JABが三菱ふそうにISO9000の認証を与えた審査機関に見直しを指示した。しかし、審査機関は、一度は「認証に問題ない」と回答した。JABは、これでは回答にならないとして、再回答をもとめ、審査機関は、三菱ふそうを訪問して、認証辞退を求めたが、押し切れなかった。
この問題に対して、日本のISO・TC176の委員である飯塚東大教授は、「認証は商売ではない。審査機関が企業に相談に行くこと自体がおかしい。企業の顔色ばかりうかがうような癒着を疑われかねない。」と危惧(きぐ)を述べていた。

ここに、パートナーシップの大きな落とし穴がある。企業側も客観的な毅然とした審査姿勢で審査してもらったほうが、自社の不正を早期に正すことができる。それが「真のパートナーシップ」であろう。「談合的パートナーシップ」では意味がない。

3.T社のパートナーシップへの反論
パートナーシップは、付加価値審査と同じ審査姿勢となるので、不適合があいまいになり、審査員個人基準の審査になりやすい。特に、審査員が、書類重装備が品質向上になるというパラダイムを持っているときに、熱心な最悪のパートナーとなる(このホームページの基礎知識コーナーの「2つの違った品質保証のパラダイム(paradigm):H15年3月1週号」参照)。

T社では、予備審査の不適合リストに対して、社長が次のようなクレーム書を出した。

「審査報告書には、『この審査報告書は組織のマネジメントシステムの審査における当審査機関のパートナーシップの一部をなすものである。』とありますが、審査基準が審査員の恣意的であり、公正を欠き、不適合と観察事項の区分が混乱しており、当社に無意味な書類増や管理負担増となり、当社が要請する適合性審査を重要視せず、ほとんど助言に終始したことは、パートナーシップにならないと思います。基本的にISO9001:2000の“文書化した手順”の意味すらよく理解されておらず、多くの恣意的な文書要求がありました。
このような審査でパートナーシップを強要されたのでは、当社のシステムは規格の趣旨との整合性を欠いた貧弱なシステムとなる恐れがあります。 真のパートナーシップは、審査員の力量にあった適合性の審査に徹することだと思います。

T社は、社長以下、幹部がこの姿勢を一貫して保ち、本審査で簡潔なシステムにより不適合ゼロで認証された。

4.審査員への接待とパートナーシップ
パートナーシップは、守るべき倫理的なエチケットの混乱ともなる。
(1)A社の場合
知り合いの中小企業診断士S氏が、A社の審査に立ち会った。1人で3日間の審査であったが、審査時間が余った。S氏は、それではと、近所の温泉に審査員を案内した。
私は、後でそれを聞いて、それは供応となるとS氏を諌めた。彼は「審査員も人間だし、ある意味で企業のパートナーだから、ぎすぎすしたくない。」と言った。私は「逆に人間だからこそ、弱い点がある。だから順守すべきルールがある。親しき中にも礼儀ありを守るべきだ。」と言った。
(2)H社の場合
H社はスナックなどの食品メーカーであった。一般の見学者がよく来る。見学者には、スナックの詰め合わせのお土産パックがあった。H社は予備審査に来た審査員2名にも、そのお土産にそのパックを無料で提供した。2名の審査員は、それは供応になると受け取りを断った。そのうち、1名は、三千円ほどのお金を払い、欲しいスナックだけを買っていった。企業側は、審査のすがすがしさを体験した。
(3)S社の場合
S社の近くには、釣りで有名な海岸があった。審査中に、雑談で、審査員が強要はしないが、やんわりと釣りをしたいというようなことを匂わせた。しかし、S社の幹部は、審査の供応の問題は知っていたのでとりあわなかった。結局、審査員はそのまま帰った。S社の幹部は、後で、品性の低い審査員だなと笑っていた。
(4)T社の場合
審査機関のセールス担当に、T社の社長が「審査を受けるのは始めてであるので、不安だ。」と言った。セールス担当は、「予備審査が2日間あるので、初日の夜、審査員2人が会社の近くに泊まるから、審査員たちと夕食をともにして、パートナーだからコミュニケーションを豊かにし、審査も気楽に受けるようにしたらどうですか。」と言った。
私は、予備審査前にそれを知り、社長に夕食会の中止を助言し、審査機関のセールスの人に「会社のために、審査基準があいまいになるおそれがある」とクレームをつけた。すぐにセールスの人から、詫びのメールが来た。夕食会は中止され、意味を理解した社長は、腹を決めた。結果的に不適合ゼロで認証を終わった。