「中小企業のためのISO9001」邦訳、遂に発刊・その2/2
(H17年6月3週号)

先週からの続きである。最初、12項目であったが、その後、2項目追加され、現在、14項目となった。
なお、94年版の「中小企業のためのISO9000」を「よくない本だ。」と過去に言っていた審査機関の部長がいた(このホームページの2000年版項目別コーナーの5.の「中小企業のマネジメントレビュー:H16年3月3週号」参照)。
また、別な審査機関の審査部長は「この本はサービス業の例が少ないので参考にならない。」と言った。しかし、これを翻訳した久米教授は、序文でサービス業の例が多いのでサービス業にとってもよい参考なると書いていた。要するに読んでいないのに読んだように振舞っていたか、規格の理解不足や現場を知らないための読み込み不足が原因であるかのどちらかであろう。

番号
原書訳頁
原書の解説
訳注
訳注の解説概要
訳注への私のコメント
7
p.118
119
7.5.2妥当性確認の例としてコンコリートと溶接の例があげられている。
26
事例として溶接の例は適当でないというのが一般的理解である。改訂版では特殊工程という概念をはずし、妥当性の確認が必要なプロセスの管理としている。 ISO9000:2000「用語定義」3.4.1の参考3には依然として「このようなプロセスは『特殊工程』と呼ばれることが多い」とあり、「特殊工程」用語は健在である(このホームページの2000年版項目別コーナーの7.5の「特殊工程の『それ以降』の意味 (H14年10月5週号)」参照)。また、何故、コンクリートの例よりも溶接の例が問題になるのか理解できない。
ISO/TS16949では全プロセスが特殊工程扱いとする要求である。この方が「特殊」がなくなり分かりやすい。それがプロセス重視のプロセスアプローチ?ではないのか。
8
p.119 7.5.3識別とトレーサビリティ
27
原書は識別とトレーサビリティの概念を取り違えている。 原書の説明はトレーサビリティの識別に解説の重点をおいている。別に取り違えるような記述はない。製品の識別とトレーサビリティのための識別はダブルことが多いという事実だけである。
9
p.120 7.5.3「トレーサビリティのための識別は、製品の識別に使えるものもある。」
29
「製品の識別にはトレーサビリティに使えるものがある」と逆にすべきである。 この文は94年版と全く同じ。この文があることは原書では、トレーサビリティの識別と製品の識別を正確に区別していることになる。トレーサビリティの識別のほうが複雑であるから、単なる製品識別はトレーサビリティには使えないことが多い。原書の順序のほうが実際的である。
10
p.123 7.5.5製品の保存要求は94年版では「契約で規定された場合、最終納入先までの引渡しまで保護を継続すること」とあったのが2000年版で「契約で規定された場合」が削除されたので、適用が拡大された。
33
項目を合体しただけで要求上、なんら変更がない。 94年版で最終納入先までの引渡しまでの保護を契約で規定されていなかった企業は、2000年版では適用拡大を受けることになるから、変更となる。
94年版のとき、「保存」に対して、半導体の静電防止などの保存処理を意味するISO9000−2などのISO本部指針の説明があった(このホームページの2000年版項目別分類コーナーの7.5.の「内部処理の意味:H13年3月3週号」参照)。ところがこれに対し、検査合格後の出荷前製品の隔離区分を意味するという日本の間違った解釈があった。そのときからの影響か(このホームページの2000年版項目別分類コーナーの5.の「インターネットは世界を巡る。外国人の意見:H13.5月5週号」の3を参照)。
11
p.130 7.6「中小企業の場合、校正を自組織で行うか外部に委託するかの選択をしなければならないことが多い。」
36
校正を外部で行うかどうかは規模の問題ではない。校正する力量の有無による。 この文は94年版と全く同じ。
大企業では、校正専門家を採用するなどして社内の校正の力量を増大することは容易であり、そのような例が多い。中小企業では簡単にそれはできない。事実上、規模は関係する。
12
p.133 8.1監視及び測定は次の4つに分かれる。
1.顧客満足度
2. 品質マネジメントの実施状況
3. プロセスの適合性
4. 製品・サービスの適合性
37
品質マネジメントシステムの監視及び測定には、顧客満足、内部監査、プロセスの監視及び測定、製品の監視及び測定も全部含まれる。
4つは並行ではない。
これがPDCAモデルの誤用で混乱している典型的症状である(このホームページの「2000年版項目別分類」コーナーの「8.2.2」の「製品実現プロセスの監視及び測定と内部監査の重複関係:H16年1月2週号」参照)。これを原書は8.2.3を8.2.4と合体して解説しさらりと逃げている。企業現場の具体例で解説しようとすると規格の問題点が浮き出てくる。
例えば、現場の機械加工を具体的に考えると、これはマネジメントシステム活動でもマネジメントプロセスでもない。マネジメントシステムが「必要とする」が、含まれない。したがって、機械加工のプロセスの監視及び測定とその機械加工のマネジメントシステム(7.5.1の製造の管理など)の監査及び測定(これは内部監査による)とは異なる。原書のように4つは並行となる。
13
p.134 8.3で不適合対応を説明している。
38
不適合でなく、不適合製 品である。
「8.3 不適合製品の管理」は本来、その性質からして7.(製品実現)の中で規定されるべきであった。何の間違いから発生したのかここで記述することは意味がないので、こうした混乱があるISO9001にどう対応すればよいのかの解説を以下に追加することにする。
「8.3 不適合製品の管理」が7.(製品実現)の中で規定されるべきなら、その不適合製品は「8.2.3 プロセスの監視及び測定」や「8.2.4 製品の監視及び測定」で発見されるから、順序からして、これらも7.(製品実現)の中で規定されるべきとなる。その説明がないので、一貫性がない。
これが間違いで修正するとなると、規格構成の大変更である。何故、この本の訳注でISO9001:2000そのものの批判をするのであろうか不可解である。それはTC176内で決着をつけ、それから正式にISO9001:2000を発行すべきではないか。大混乱を与える訳注である。
このISO9001:2000の規格構成の混乱は、PDCAモデルの誤用からきている(このホームページの2000年版項目別分類8.2.2の「製品実現プロセスの監視及び測定と内部監査の重複関係:H16年1月2週号」参照)。
14
p.182 軽微な不適合の場合、次回維持審査までに修正を条件に認証されることがある。
46
JAB認定ではありえない。 実状は日本でも原書通り行われている例が多い。