1.東京地震とエレベーター閉じ込め事故
4月23日の東京での地震は震度5強の揺れで、これにより、エレベーターの閉じ込め事故が多発した。ところが、日本エレベーター協会の調査によると、閉じ込め事故は1都3県で78件、うち
73件は初期微動を感知して最寄り階に止める「地震時管制運転装置」を備えたエレベーターで発生した。
この機能が働かなかった原因はまだ、明確でないが、単なる故障でなく、取扱い方法など設計変更が必要となろう。
2.設計の妥当性との関係
結果的に、4月23日の地震は「地震時管制運転装置」の設計の妥当性確認となった。
「中小企業のためのISO9001:何をなすべきか:ISO/TC176からの助言」(2000年版)では、「7.3.6 設計の妥当性確認」では、次のような説明がある。
「実際の使用条件におかれない限り、その「全性能領域」(the total performance range)の妥当性確認ができないというものもある。100年に一度しか起こらないことなら、「設計範囲」(the
design range)の極端な性能の妥当性確認が不可能なこともある。例えば、設計上極限の高温及び低温状態におかれた場合の空調システムの性能は、実際にそのような極限温度にならない限り妥当性確認はできない。」
実際に、これが73件のエレベーターの「地震時管制運転装置」で起きた。
上記の説明に対して、この本の訳者は「この説明はおかしい。計算やシミュレーションなどでできるかぎり設計の妥当性確認を行うべきだ。」と訳注で反論している(このホームページの「基礎知識」コーナーの「『中小企業のためのISO9001』邦訳、遂に発刊・その1/2:H17年6月2週号」の番号4.参照)。
当然、「地震時管制運転装置」はメーカーである程度のシミュレーションをしているだろう。しかし、ビル全体を実際の地震の状況に等しい状態で、揺らしてやる「全性能領域」の実験は不可能である。「中小企業のためのISO9001」の原書の常識が今度の地震で証明されたようである。
3.一品料理生産の設計の妥当性確認
機械装置などは、設計し、製造し、顧客の使用場所で据え付けて、テスト運転をしてからはじめて設計の妥当性確認ができることが多い。
だから、設計者が現場作業に立ち会うことがある。そこで修正が発生することもある。顧客も実際のテストをみて、製品品質の追加要求をすることもある。
H社は、現場据付段階では、設計も製造も完了しているので、設計の手を離れているとして、最初、据え付けの情報を設計の妥当性確認情報としなかった。据え付け時の修正情報は顧客クレーム扱いとなった。しかし、意味のないものになり、事務処理も大変であった。
結局、据え付け完了をもって、設計完了とし、据え付け時の修正情報は設計の妥当性確認と設計変更管理に含めた。