品質マネジメントプロセスと製品実現プロセスの関係質疑・その1/2
A氏とのやりとり
(H17年8月5週号)

A氏:
ホームページの基礎知識コーナーの「品質マネジメントシステムは製品実現プロセスを含むのか?」(H14.10月4週号)について質問させていただきます。西沢さんのお考えでは、
1.品質マネジメントシステムは製品実現プロセスを含まない。
2.8.2.3は、「品質マネジメントシステムのプロセスを……」ではなく、
     「製品実現のプロセスを……」と書かれるべきである。
3.品質マネジメントシステム(そのプロセスを含む)の監視は、内部監査である。
以上のように読めますが、このような解釈でよろしいしょうか?
審査機関では、8.2.3で監視するプロセスは「4.1で明らかにした全てのプロセス」との解釈を採っています。その一方で、8.2.3では「製品の適合性の保証のために」と、いかにも紛らわしい表現をしています。当方も混乱しています。
西沢:

1.2.3とも全くその通りです。この問題は94年版では、明快でしたが、2000年版でPDCAモデルを使ったとき、マネジメントサイクルに、Do(製品実現プロセス)が入り込んで混乱したと思います。
ISO9001は、スポーツでいうと監督(マネジメント活動をする人)の規格です。Doは野球、サッカー、バスケットなど、プレイは異なります。しかし、監督業務は似ており、その最低の共通規格です。野球、サッカー、バスケットなど、プレイごとの異なるDoのルールブックではありません。プレイは異なっても選手がプレイしている間(Doの進行中)は、監督はベンチで(プロのバスケットではスーツ姿で)Doについての監視及び測定をしていなくてはなりません。すなわち、7.の項目と8.2.3とはダブります。
ですから、私はマニュアルで8.2.3項目は、基本的に8.2.2の内部監査にふります。
このように、ISO9001:2000はPDCAの間違った適用で混乱しています(このホームページの「2000年版項目別分類」の「PDCAモデルの誤用:品質マネジメントプロセスの誤用:H14年5月4週号」参照)。

A氏:

では、品質マネジメントシステムに「製品実現のプロセスを含まない」となると、項目7.は、いったい何者なのでしょうか?
当社では、戯れに「鵜匠モデル」と称して、個々の技術者を「鵜」に、管理者である部長を「鵜匠」にたとえていますが、項目7.は「鵜」が自らやること、又は「鵜匠」が「鵜」にやらせるべきこととなるのでしょうか?
こんな話をしだすときりがなくなりますが、混乱の火種がこんな所とは思っても見ませんでした。

西沢:

「鵜匠モデル」はいいですね。「鵜匠」は人間、「鵜」は人間でないので区別が明確ですから。
ISO9001:2000は「鵜匠」の規格です。「鵜」の規格ではありません。「鵜」が自ら行うことではありません。「鵜匠」が船の上で「鵜」につけた「手綱」により水にいる「鵜」をいかにさばくかが項目7.で扱うマネジメント活動です。
ですから、項目7.は「鵜」が魚をさがし呑みこんでいるとき(製品実現プロセス進行中)の「鵜匠」のマネジメント活動を定めたもので、8.2.3とダブります。

なお、私のホームページの「2000年版項目別分類」コーナーの「8.2.2内部監査」の「製品実現プロセスの監視及び測定と内部監査の重複関係:H16年1月2週号」の図を参考にしてください。
Manageの英語の語源は英和辞書によると「(馬を)手で御する」とあります。この場合は、鵜匠は馬上の騎手にあたり、鵜は馬になります。騎手が手綱などにより馬を意のままに御することが「製品実現中」のマネジメントということになります。同様に、鵜匠が鵜を意のままに御することも「製品実現中」のマネジメントです。
「鵜」は水の中、「馬」は陸上で活動するなど、両者の共通性がほとんどありませんが、「鵜匠」と「騎手」の「手綱さばき」のポイントは多くの共通性があるでしょう。マネジメントだからです。

A氏:

「鵜匠」モデルを、社内の飲み会で話したところ、「鵜」に相当する連中にも結構ウケました。当社では、「鵜匠」であるべき本部長が、「鵜」でもあり、近年のリストラの余波で、「鵜匠」自体が水の中に飛び込んで魚を追いかけているという、困った状況にあります。

西沢:

「鵜匠」モデルで正確な理解が広がったようですね。
「鵜匠」が鵜になることが多いのは、中小企業では通例ですが、これはマネジャーが実務をよく理解できるという良い面もあります。しかし、マネジメント面で困るのは、「鵜匠」の活動と「鵜」の活動の違いが、規格の混乱と同様によくわからなくなることです。ひどいときは他の「鵜」が「鵜匠」なしで動いても「自主性」という美名のもとに気にしないということもあり、マネジメント機能の欠落となります。

A氏:

実は、当社の一番の問題が、これ。もともと「一人親方の集合体」と公然と言われている企業体質だけあって、容易に直るものではなさそうです。

西沢:
「鵜匠」と「鵜」の役割を兼任している企業ほど、システム化したマネジメントの確立が重要なのですが、ISO9001:2000によるシステム化は文書作りだという誤解のために、経営者は他人事となりやすいですね。結果としてISO9001:2000の維持はムダな費用となります。
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