品質マニュアル構成の見直し
(H17年9月4週号)

M氏: 弊社の品質マニュアル(QM)は規格どおりの章立てで実際の業務の順番と異なっています。また、文言も規格の訳語が日常の当社用語と異なっており、なじめない表現になっています。このため、関係者に読まれないQMになっています。
ISO9001の維持審査が近づくと、さっと目を通すのがせいぜいです。審査はこのQMをベースに行われます。しかし、ろくに読んでいないものですから、まともな回答ができないのが実状です。ISO9001を取得して約10年立ちますが、いまだにこの有様です。
これを変革すべく、業務にそった読まれるQMに改善し、実業務とISOとの乖離をなくして行きたいと考えております。
このため、次の方針で改善を考えています。コメントをお願いします。
1.QM全体をPDCAのサイクルで章立てをする。
2.規格の用語をできるだけ自分たちの用語に置き換える。
3.JIS文の意味不明なところは英文にもどって確認する。
4.規格でダブって出てくるところは一ヶ所にまとめて記載する。

このように改善しますと審査員からは、規格との適合性を見るのがやりにくくなり歓迎されないかも知れませんが、われわれの業務のためのQMという考えを重視して、進めてゆきたいと思います。
私のコメント: 誤解しておられるのは、ISO9001:2000は94年版と異なり、すでにPDCAモデルを使っていることです。問題は、PDCAモデルを正確に適用していないため、基本的な混乱を起こし、規格自体、分かりにくくなっていることです。この点、ISO14001:2004のほうが比較的正確なPDCA構成となっています。
ですから、分かりやすいQM作成を目指して見直すには、この誤用問題の正確な理解が前提です(このホームページの「2000年版項目別分類」の4.1の「PDCAモデルの誤用:品質マネジメントプロセスの誤用:H14年5月4週号」参照)。
私のホームページでは、条項別にその問題点を指摘していますが、PDCA順序という観点からそれらをまとめると、概要、下記の11項目になります。
1. 7.6測定機器の管理は、適切な測定機器の提供、精度維持など、他の生産設備などのインフラストラクチャー管理と同じ。6.3に含まれるべきである。
2. 7.1から7.5までは、業種によって異なる製品実現プロセスそのものの技術的な要求でなく、そのプロセスを管理(監視及び測定)する業種共通のマネジメント活動の要求(このホームページの基礎知識コーナーの「品質マネジメントシステムは製品実現プロセスを含むのか?:H14.10月4週号」参照)。
3. 7.1の製品実現計画は、製品に対する顧客の要求が明確でないと不可能。したがって、7.2の後に7.1がくるべきである。
但し、7.1の製品実現計画は「設計をして製造をするというプロジェクト単位の計画あるいは新製品の計画」と「製造工程の製品実現計画」の2種類ある。前者は、7.3の設計の前に来る。しかし、後者は、製品設計が終わらないと不可能なので7.3の後になる。(このホームページの「2000年版項目別分類」コーナーの7.1項目の「製品実現化プロセスと製造及びサービス提供プロセスの混同:H13年3月2週号」参照。)
4. 7.3に工程設計を入れてもよい。これが狭義の7.1の製品実現計画活動である。
5. 顧客満足度の情報は、製品実現活動中に入手され、迅速に手を打つように管理される必要がある。
6. 検査は、製品実現活動中に品質保証のために適切な段階で行われるように管理される必要がある。7.4.3は、ここに含まれるべきである。
7. 不適合品の管理は、検査の結果、発見された不適合品を間違って使用したり、出荷したりしないよう製品実現活動中に迅速に行うよう管理される必要がある。
8. 8.2.3のプロセスの監視及び測定は、マネジメントシステムのプロセスと製品実現プロセスの監視及び測定に分かれる。
マネジメントシステムの監視及び測定は8.2.2であり、製品実現プロセスの監視及び測定は7.1から7.5でプロセスごとにすでに行っている。ダブるので独立したものは不要(このホームページの「2000年版項目別分類」コーナーの「8.2.2内部監査」の「製品実現プロセスの監視及び測定と内部監査の重複関係:H16年1月2週号」参照)。
9. 記録の管理は、PDCA順ではISO14001:2004のように、規格の最後のほうに来るべきである。文書と記録の違いのあいまいさが、この順序の混乱に反映している(このホームページの「統合システムコーナー」の「T.統合マネジメントシステムを成功させるための前提となる常識(5)」及び「ISO14001規格関係」コーナーの「ISO9001とISO14001での記録の扱いの相違点の原因:H16年8月3週号」参照)。
10. 予防処置は、Do段階で間違いを起こさないように、P段階、あるいは、Doの途中段階で行う処置である。したがって、規格のP及び途中段階の4.から7までの要求項目は、すべて予防処置である。PDCAのプロセスでは、Doが完了してからの予防はありえない(このホームページの2000年版項目別分類の8.5の「何故、「8.5.3 予防処置」の扱いは面倒なのか?:H17年4月4週号」参照)。
なぜ、文書の審査・承認、改訂版や配付の管理をするのか?なぜ、品質方針を徹底するのか?なぜ、組織分担を明確にするのか?なぜ、要員を訓練し提供するのか?なぜ、設計の審査、検証、試作をするのか?なぜ、購買先を評価するのか?なぜ、品物の識別をするのか?なぜ、不適合品を識別し、きちんと処理するのか?
皆、起こり得る不適合の予防のための処置である。
11. マネジメントレビューは、PDCA順ではISO14001:2004のように規格の最後のほうに来るべきである。


これらをISO9001:2000の現在の項目番号を使い、表にまとめたのが次の「PDCA順序表」です(欄の中のMGはマネジメントの略です)。説明欄の番号は、対応する上記の11項目の項目番号を示します。
分かりやすい用語表の例も最後に添付します。

なお、私はコンサルティングでは、マニュアルはISO9001:2000の構成でまとめていますが、内容は上記の明確な考えで、規格の矛盾を調整して記述しています。
ポイントは形よりも本質の理解です。
どうせ、ISO9001:2000を取得するなら、最低必要なことは納得できるシステム構造を持つことです。

 


PDCA順序表
区分
ISONo.
MG活動1/2
広義の製品実現活動(マネジメント活動ではない)
Mg活動2 /2
説明番号
Doの前

Do進行中
Doの後
Plan
Doの管理
Do
Check
Act
指示情報管理
8.5.3
4.2.1(eは除外)
 
 
 
 
9
4.2.2
 
 
 
 
4.2.3
 
 
 
 
方針・組織
5(5.6は除く)
 
 
 
 
9、11
資源の
投入管理
6.1
6.2
 
 
 
 
 
6.3
 
 
 
 
6.4
 
 
 
 
7.6
 
 
 
 

1

製品実現
プロセスの管理
7.27.1

 
営業(新製品計画)
 
 
2、3
7.3
製品設計
 
 
7.1
工程設計
 
 
3、4
7.4
 
購買
 
 
 
7.5
 
製造(狭義の製品実現活動)
 
 

8.2.1
 
顧客対応
 
 

5
7.4.3、8.2.4

 
検査
 
 
6
8.3
 
不適合品処理
 
 
7、10
システム監査
8.2.2(8.2.3は不要)
 
 
 
 
8
記録情報管理
4.2.1e)、4.2.4
 
 
 
 
9
記録分析
8.4
 
 
 
 
 
改善
8.5.1、8.5.2
 
 
 
 
10
経営改善
5.6
 
 
 
 
11

 

分かりやすい訳語例
ISO番号
JIS訳語
好ましい訳語
理由
4.1
アウトソース
外部委託
国語研究所の推奨
6.2
力量
能力
「量」のための強制的な段階評価の防止のため(このホームページの2000版項目別分類6の「力量のレベル?:H14年12月1週号」参照)。
8.2.4
製品の監視・測定
検査(製造業)
従来から使用して定着しているため。
8.3
不適合品の処置
不適合品の処理
起きた「処理」と改善策の「処置」の混同防止のため。