審査における5.4.2 a)の解釈についての討議
(H17年10月1週号)

M 氏:

最近、ISO9001:2000の維持審査で審査員から5.4.2a)で品質目標達成のための実行計画が品質マニュアルで明確でないとの指摘がありました。JISの出だしの「品質目標及び4.1に規定する要求事項を満たすために、・・・・・」には納得できないところがあります。
審査員はJIS訳のように「品質目標 and 4.1項を満たすために」 という解釈のようですが、原文では「as well as the quality objectives」となっているので、「4.1に規定する要求事項を満たすために、品質目標と同様に」と解釈すべきと思います。

 

私のコメント:

私は、今まで、4.1は、規格にそったマネジメントシステムの確立を要求し、5.4.2 a)はその計画責任がトップマネジメントであることを要求していると解釈していたので、5.4.2 a)の細かい点はあまり関心がありませんでした。ご質問を受けて、この規格の部分を改めて読むと、なんでここに品質目標が登場するのかと率直に感じました。考えてみれば、品質マネジメントシステムの一要素にすぎない品質目標の要求を満たすように、上位にある品質マネジメントシステムを策定するのは矛盾ですね。何か基本的におかしいなと直感して、今まで読んでいなかったISO/TC176発行の解説書「中小企業のためのISO9001」の5.4.2の部分を読むと、この計画策定は2つのレベルに分けられるとしています。第1レベルは品質マネジメントシステムが4.1の要求事項を満足するために必要な計画策定、第2レベルは、品質目標を達成するために必要な計画策定です。これで矛盾が解けました。品質目標を満足するために、品質マネジメントシステムを計画するという矛盾は英語本文にはなかったのですね。

 

M 氏: まとめると下表のようになりますね。as well as の解釈が全く違いますね。
区分 満たす要求事項 計画内容
JIS訳
品質目標と4.1
品質マネジメントシステム
本文
4.1
品質マネジメントシステム
品質目標
品質目標の達成計画

 

私のコメント:

as well as の前後にあるコンマ(, )が曲者みたいですね。コンマがないと満たす要求が2つあるというJIS訳になるのは明らかですがーーーー。
2つの実施計画があるとなると5.4.2 a)の訳は
「4.1で規定する要求事項を満足するために、品質マネジメントシステムの計画が行われる。同様に、品質目標を満たすための計画が行われる。」
となりますね。審査員はこの解釈で指摘したようですね。その点、正論ですね。
またまた、「中小企業のためのISO9001」の本がJISの訳者から嫌われることになりますかね。
例の4.2.2 品質マニュアルでも現在の英語の「includes」 が間違いで、コンマのある「, including」ではないかという論議がありますね。前者だとa)からc)までだけマニュアルにあればよいとなりますが、後者だとa)からc)までもさらに追加して含めてくれという意味になります。これと似たコンマ解釈問題でしょうか。
私は、品質マニュアルの趣旨からして、コンマのあるほうがよいと思いますがね。

 

M 氏:

「中小企業のためのISO9001」の解釈に従うとしても、5.4.1で「トップマネジメントは達成度が判定可能な品質目標の設定を確実にしなさい」と要求しながら、5.4.2 a)で「品質目標の達成の計画を立てなさい。」と、なぜ、ダブってくどくど言うのでしょうかね。品質目標の達成計画がなくて、達成度が判定可能な品質目標設定などありえないでしょう?5.4.2 は品質マネジメントシステムの計画責任だけにしぼったほうが分かりやすいですね。

 

私のコメント:

ISO14001の96年版では、「4.3.3 目的及び目標」とそれを達成する計画については「4.3.4 環境マネジメントプログラム」と別でしたが、2004年の改訂で、「4.3.3環境目的・目標とその実施計画」として同じ項目に統一され、分かりやすくなりました。ISO9001:2000も同様の改善が必要なようですね。

 

M 氏:

まあ、ISO9001:2000は4.1項(これもa)からf)は不要でISO14001:2004のように1行で明快にすべきです)があるので、5.4.2項はそれほど重要な項目ではないと思います。ですから、これにあまりこだわりたくありません。これを「4.1項で品質マネジメントシステムの計画はすでにできているので、5.4.2ではこの計画を実行することをトップマネジメントはensure(確実に)しなさいと言っている。」と理解したいと思いますが。こじつけでしょうか?

 

私のコメント:

5.4.2は、あくまでもマネジメントシステムの計画に関することであり、それは経営者の責任(ensure責任)であることを要求していると考えるのが素直でしょう。しかし、現実には、5.4.2a)に品質目標の要求が存在するので、マニュアル表現は一ひねりした対応が必要となりますね。

 

M 氏: 分かりました。そこで規格の分かりにくさを整理し、かつ、審査員とのムダな議論を避けるには、次の下線のような文章をQMの5.4.2a)に追加したいと思います。品質と関係のない意味のない文章いじりですがね。

「5.4.2 品質マネジメントシステムの計画
a)4.1に規定する要求事項を満たすために、当社の品質マネジメントシステムの計画は、ISO9001:2000の要求にそって管理責任者が策定し、品質マニュアルに定め、社長が承認し、確実なものとする。
なお、品質目標を満たす計画については、このマニュアルの5.4.1に準ずる。」

以上。