JFEスチール千葉地区の水質汚染虚偽報告とISO14001
(H17年11月1週号)

1.事件の発生と報道
昨年、12月に千葉の海上保安部の調査から発覚し、最近、報道されているこの問題は、結局、会社ぐるみと認定されず、部長、工場長、担当社員の3人の罰金刑で終わるようだ。

しかし、JFEスチールは、ISO14001の認証をとっているので、これを防止するようなマネジメントシステムをもっているはずである。これは、ISO14001:1996では、4.5.1項で、法令順守の定期的評価のマネジメントシステムの要求があり、文書化した手順の要求まである。ISO14001:2004では、4.5.2で定期的な順守評価のマネジメントシステムが同様に要求されている。
新聞記事やJFEの公開報告では、今回の問題でISO14001のマネジメントシステムとの関係をふれていない。

2.原因調査
JFEスチールが外部まで入れて行った調査(これが実は皮肉なことにISO14001の順守評価となっている。定期ではないが――。)によると虚偽報告は次のように担当者任せとなっていた。

年月
担当者
記録
1992年7月〜1996年8月 B氏 2001年以前の記録は廃棄済み
1996年9月〜1997年10月 A氏
1997年11月〜2000年2月 C氏
2000年3月〜2005年1月 A氏

なぜ、A氏が虚偽の報告をしたかというと、1996年にB氏から業務引継ぎをしたときに、そうするように言われたからだという。しかし、B氏に対するヒアリングでは、B氏は否定しているという。当時の記録は廃棄されているので証拠はない。C氏は退職しており、行方が分からず、ヒアリングしていないという。しかし、1992年あたりから10年以上にわたる間、虚偽報告をしていた疑いが濃い。数千枚の虚偽の報告書が発生したようだ。
今回、A氏(39才)だけは罰金20万円の刑であるという。B氏は起訴猶予らしい。

この間、直属の上司はチェックしていないで、放任であったとのこと。要するに、この問題は、マネジメント問題である。「鵜匠」不在の「鵜」であり、ISO14001のマネジメントシステムを認証しているのに、マネジメント不在であった(このホームページの基礎知識コーナーの「品質マネジメントプロセスと製品実現プロセスの関係質疑・その1/2 A氏とのやりとり:H17年8月5週号」及び新着ニュース「JR西日本事故:『鵜』モデルと是正処置のレビュー:H17年10月2週号」参照)。
それで、今回、「鵜匠」である部長と工場長も罰金となったようだ。

3.ISO14001:2004との関係
規格では、「4.5.2 順守評価」で定期的な評価をするようなマネジメントシステムの要求をしている。JFEスチールは、担当者A氏の自主評価で終わるシステムだったのか。審査機関もこのシステムを認めていたのか?
この「定期的な評価」とは担当責任者以外の客観的な評価を意味している。審査員の中には、これを理解していない人もいる(このホームページのISO14001規格関係コーナーの「ISO14001:2004移行審査における順守評価方法の論議:H17年9月3週号」参照)。

新聞報道では、この4.5.2項のJFEスチールのマネジメントシステムについての記事がない。対策として、今後、上司がきちんとチェックするという。そして、会社をあげての反省である。JR西日本の対応とよく似ている(新着ニュース「JR西日本事故:『鵜』モデルと是正処置のレビュー:H17年10月2週号」参照)。
しかし、虚偽報告は、書類の形式を整えればよいという考えから出ている反省がないようだ。重たい管理をすることが反省の結果となりそうだ。そうなると、また、別な虚偽報告の温床となろう。

JFEスチールは、環境パトロールもしているというが、排水場所は、あまりにも汚い状態であったという。

以前、原子力発電で偽のデータが問題になり、政府の担当官庁の検査官が書類チェックを厳しくするシーンがテレビに出たが、驚いたことに、清書されたチェックシートを事務所で見ていた。現場でダブルチェックしたり、生データを見たりということをしていなかった。これでは重要データに関する順守評価にならない。

JFEスチールのISO14001の審査機関は日本系のある審査機関である。新聞では、この審査機関への取材もない。
日産のゴーン氏が言う。「日本にないのはマネジメントだけだ。」
それは、新聞記事も同じである。