S社のISO14001:2004移行審査
(H17年11月2週号)

1.S社の特徴
S社は20人に満たない小企業である。顧客のライン内に小さな装置を設計し、設置する業務を行う。装置は購入品や外注品を現場に納入して組立てられるので、工場がない。組織で動くより個人的な活動中心の仕事である。会社としての活動の中心は10人くらいの人が働く事務所ビルである。だから、本来、環境負荷は一般家庭並みの会社である。

2.S社とISOの歴史
S社のISOは、ワンマンの創業社長(ある大手企業をやめて独立)のISOへの強い関心なしでは語れない。
(1)2001年夏:ISO9001:1994の取得
2000年に、社長は、大手の顧客がISO9001などのマネジメントシステムの導入をしているのを見て、自社もISO9001取得に挑戦することにした。管理責任者は、数年前から大手の管理経験者を天下り的に採用していたのでそれを当てた。審査機関はL機関であった。1年後、取得したとき、社長は大喜びであった。

(2)2002年秋:ISO9001の2000年版への移行
94年版のときと同じ管理責任者により、無事に移行した。

(3)2004年秋:ISO14001:1996の取得
2003年末に社長は、さらにISO9001:2000と統合してISO14001に挑戦することを決意した。品質の管理責任者がそのまま、環境も兼任した。しかし、社長は、次第に健康を害し、入院することになった。その年の秋にISO14001を取得したが、残念ながら、墓前への報告となった。社長の交際範囲が広かったのか壮大な葬式であった。

(4)2005年春:ISOマネジメントシステムの崩壊
最初の管理責任者は、定年になり、嘱託となったので、現場畑からの子飼いの管理者が2代目の管理責任者に任命された。新社長は子飼いの技術者であった。
子飼いの新社長も管理責任者も、小企業育ちで、かつ、技術畑、現場畑出身のためか、マネジメントシステムについては、無関心であった。1年たって品質目標も環境目標の設定も放置された。マネジメントシステムはトップと管理責任者の交代とともに崩壊した。

(5)2005年秋:ISO14001の2004年版への移行
2代目の管理責任者は、「当社の業務は、環境負荷が極めて少ないという特徴からしてISO14001の維持はあまり意味がない」と消極的であった。しかし、創業社長の意思を簡単に捨てるわけに行かないようであった。
嘱託であった初代管理責任者が見かねて、若い人に管理責任者を変更するように社長に働きかけ、管理責任者は変更され、3代目になった。それは創業社長の家族の一員であった。放置されていた品質目標も環境目標もさかのぼって作られた。

ところがまた、移行審査直前に、創業社長の親族が株をある会社に全部売却し、創業社長一族は完全に業務から退くことになった。こうして、またまた、経験不足な新しい管理責任者(4代目)を迎えて、ISO14001の2004年版に移行することになった。

審査結果は、以下の通りで、経験不足な新しい管理責任者は、意地の悪い審査員の指摘に対して、これをのみ、なんとか是正処置を行うようである。環境負荷のきわめて少ない企業にとってムダなあがきであり、審査員の陰湿ないじめの被害者になるだけであろう。外部審査はISO9001だけとして、環境自主宣言に変える手もある。
しかし、外部の強制がないと、なお崩壊しやすいかもしれない。

いずれにせよ、S社のISOマネジメントシステムは創業社長の死と初代管理責任者の定年引退で終わったと言える。まさに「企業は人なり」である。

No.
是正要求事項
具体的な意味
私のコメント
1
各部署の活動、製品、サービスの全てから環境側面を抽出/評価することを更に明確にすることが必要でしょう。 環境側面については紙・ゴミ・電気では2004版の要求を満足していないという指摘。 審査員の「環境側面」とは「著しい環境側面」のこと。紙・ゴミ・電気では「著しい環境側面」としては認められないという意味。不適合とするshallがない。規格の序文の「この規格は環境パフォーマンスの絶対的要求事項を規定するものではない。」の趣旨に反する(このホームページのISO14001規格関係コーナーの「ISO14001:2004について間違いだらけのA審査機関:H17年8月1週号」参照)。また、審査員は「環境側面」と「著しい環境側面」を混同している。2004版では96年版と違い、まず、4.3.1a)で「環境側面」を「特定するidentify」とあり、次にb)で、その環境側面から「著しい環境側面」を「決定するdetermine」と明確に分けている。逆に審査員のほうがこの改訂の理解が不足。
2
内部監査の計画(チェックリスト等)において、”環境上の重要性及び前回までの監査の結果を考慮にいれた”ことについては、更に明確にする事が必要でしょう。 上記に修正にそって、内部監査を行うべきという趣旨。
3
マネジメントレビューの記録において、インプット;”内部監査の結果及び改善のための提案”については、更に明確に記載する事が必要でしょう。 上記の内部監査の報告にしたがって、マネジメントレビューを行うべきという趣旨。