環境不祥事とISO14001認証辞退の不思議
(H17年11月5週号)

A 氏:
2000年に、荏原製作所藤沢工場のダイオキシンの工場外河川に垂れ流し問題があったね。原因はダイオキシンの排出パイプを通常の工場の雨水の排水パイプに接続間違いをしたミスが原因だったらしい。数年くらいそのままだったらしいね。

B 氏:
そこですぐに、3年前に取得したISO14001の認証辞退となった。審査機関のSGSにとっては、辞退申請ははじめてのことだったらしい。

A 氏:
一般人でも、荏原製作所はISO14001を取得しており、かつ、審査機関が審査している。だから、審査機関にも責任があると追及する誤解もあったようだね。「審査員が配水管の接続をきちんと審査していなかったのか」とかね。

B 氏:
逆に、それが好きな技術出身の審査員がいることもあるね(このコーナーの審査/コンサル経験談コーナーの2.審査現場の問題事例の「産経新聞の「審査トラブル続出」記事のコメント:H16年3月2週号」参照)。これは誤解を拡大する。審査機関がそこまで責任を負えないのにね。
同じようにISO14001の審査で「紙、ゴミ、電気の低減は『環境目的・目標』として認めない」とはりきっている審査機関もあるね(このホームページのISO14001規格関係コーナーの「ISO14001:2004について間違いだらけのA審査機関:H17年8月1週号」参照)。これもマネジメントシステム審査がわかっていない裏返しだよ。

A 氏:
今年はじめに起きたJFKスチール千葉工場の汚水排出問題(このホームページの新着ニュースH17年11月1週号「JFEスチール千葉地区の水質汚染虚偽報告とISO14001」参照)のときも、やはり、ISO14001を辞退している。これも数年間、汚水の垂れ流しが続いていた。 そして、最近の石原産業の産業廃棄物問題だ(このホームページの新着ニュースH17年11月2週号 号外「石原産業のISO14001」)。これも意図的な違反行為のようだね。これも3年くらい続いていたらしい。やはり、ISO14001を辞退した。

B 氏:
このようなトラブルのときは、原則としてISO14001の認証は辞退すべきものなのかね?継続的改善とならないのでは?

A 氏:
ISO14001はマネジメントシステム規格だから、汚染を出したから会社が解散され、会社のマネジメントシステムが消滅するわけではないから、おかしな話だね。逆に、辞退したら、もう、今後は、法令などを守る環境マネジメントシステムは放棄しますという意味になるよ。ISO9001:2000認証の例だけど、例の構造計算偽造で問題になった木村建設は破産したので、登録は自動的に消滅となるが。

B 氏:
マネジメントシステムは失敗をした場合のことも考えている。だから、96年版だと4.5.2、2004年版でも4.5.3に是正処置のマネジメントシステムの確立、実施、維持の要求がある。ISO14001の辞退は、これも放棄したことになるのではないかね。問題の真因を追究し、効果的な是正処置をするというシステムの出番なのに、このマネジメント行動を放棄することになるんじゃないの?

A 氏:
そのせいか、荏原製作所の配水管の接続ミスも、マネジメントシステムの真因がハッキリないね。配管図の作成、下請けへの発注、工事の検収・試験テスト、ダイオキシンの定期測定など、各業務とそのマネジメント責任者はマネジメントシステムで明らかであったのではないの?


B 氏:
いずれにせよ、ダイオキシンの排出は「著しい環境側面」になっていたはずだから、運用手順も文書化され、マネジメントシステムで管理されていたはずだがね。


A 氏:
荏原製作所の接続ミスも、JEFスチールの虚偽報告も、石原産業の違反行為もマネジメントシステムの真因が明らかでないのが共通しているね。各社の管理責任者は長い間、何をやっていたのかね。だから、対策も共通していて、「すみません。今後は環境部門を強化します。」だよ。全然、真因の除去と結びついていない。


B 氏:
荏原製作所も、JEFスチールも、その後、また、ISO14001を再取得しているね。石原産業も再取得するだろう。しかし、人のやることだから、「絶対」はないだろうから、将来、また、汚染を出したら、認証を返上するのかね。PDCAの継続的改善の完全否定だね。


A 氏:

これは、ISO9001も同じだ。「ISO9001をとると不良が減る」という宣伝をしている人たちは、取得企業が大きなクレームを出すと、「ISO9001を取得しているのに、なんでこんなクレームを出すのか。」となる。だから、辞退しろとなる。このホームページの品質・環境問題に関する社会問題コーナーの「三菱ふそうのリコール問題とISO9001:2000:H16年6月2週号」の新聞記事には、最後に「認証を受けると、企業は製品や店舗、パンフレットなどに表示できる。」と書いてあるね。製品には表示できないのにね。こういう理解不足がマネジメント追求の記事不在に通ずる。
最近のマンションの耐震強度偽造でISO9001:2000取得企業はどうなるかね。ISO9001:2000では「アウトソースしたプロセスの管理を確実にすること」とあるからね。この場合、構造設計のアウトソースだが。もっとも、建設業界は書類の山で偽造が多く、感覚が麻痺し、モラル低下を起こしているらしい(このホームページの審査/コンサルコーナーの4.審査コンサル一般論の「7割近くが書類の改ざんを示唆:H13.6月1週号」参照)。今回、構造設計者に姉葉氏の名前が出たが、検査機関の検査責任者の個人名が出てこないね。内部監査で分かったレベルなのにね。ISO9001:2000では検査責任者名の明記を要求している。マネジメントシステム的には検査機関の検査時間、検査員能力など資源提供の問題なのかね。


B 氏:
病院でISO9001をとっても、医療死亡事故を出したら、その都度、ISO9001認証を辞退しなくてはならないのかね。「その事故を起こした病院の審査をしたのはどの審査機関だ」となりそうなので、病院のISO9001に熱心でない審査機関もいるそうだ。これも誤解だがね。

A 氏:
結局、マネジメントが分かっていない。だから、その限界も役割も分からない。その結果、金をかけても、マネジメント欠如のトラブルが増加するという悪循環となる。審査コストだけ増える。そして被害者はいつも弱者だよ。