新春の挨拶
(H18年1月新春号)

ベストセラー「バカの壁」の著者養老孟司氏は虫好きである。氏によると昆虫は500万種あるという。しかし、多くの人は「虫」という抽象語でマニュアル的にまとめてわかったように扱う。これはマネジメントの世界では、致命的である。なぜなら、現実に対応するのは昆虫500万種のように多様であるからだ。庭の蟻を見ても多様性を感ずる。それは感覚的に常識ではないか。

ISO9001:2000、ISO14001:2004、OHSAS18001:1999などのマネジメントシステム規格は「虫」として多様な企業のマネジメントシステムをまとめた抽象規格である。しかし、現実にあるのは昆虫500万種である。そして、昆虫は日々変化している。
この抽象と現実の落差を埋め、効率的なマネジメントシステムを設計し、構築できるのは、第一線の日常現場における多様性の謙虚な体験と把握である。それを失ってはいないか。
これは、このホームページの「統合システム」の「T.統合マネジメントシステムを成功させるための前提となる常識」に同様の考えが述べられている。
これは、長い改善コンサルタンとして業務を効果的に改善するときの心理と同じである。また、科学の実験心理と同じである。

昨年は、品質関係で大きな社会問題になったのは、JR西日本の事故とマンション・ホテルのビルの耐震偽装問題があった。環境問題では、JFEスチールと石原産業の汚染垂れ流し問題があった。そこには、運転手、1級設計士、汚染測定担当者、副工場長など、直接の原因となった個人が存在する。そして、その背景には抽象化し、画一化したマネジメントの失敗があることをこのホームページは指摘してきた。
マネジメントの欠落は、マネジメントする対象である個人や環境が多様化し、変化していることに関心がないことを示す。いくら「虫」のマニュアル規格を熱心に作成し、整理しても、現実に動く昆虫500万種に対する現場の感性を磨かない限り、構築したマネジメントシステムは成果をあげないどころが、個人のモラル低下に気がつかず、マイナス効果に終わるであろう。
個々の事態を自主的に把握し、自己の感性ある経験に基づきマニュアル的な発想に批判的な学習をし、自主的に設計する力によって効果的なマネジメントシステムを構築できるであろう。

国土交通省は、今年は耐震元年にしたいと言う。しかし、検査依存、形式的な書類の増加への方向での解決は、問題解決をおくらすであろう。それがなかった法隆寺の五重塔の時代に学ぶべきである。それは建設業界だけではない。