?責務と責任の違い
 「品質についての責務」とは、何か。責任とどう違うのか。
1・責任とは
 「4.1.1 品質方針」では、「品質についての責務」を文書化するということが要求されている。そのためか、「品質マニュアル」の例をみると「経営者は企業の品質の最終責任を持つ。」という文章を挿入したものが多いように思う。しかし、この最終的責任ということが非常に抽象的であるように思う。
 大体、元の英語は、責任はresponsibilityである。この場合は、「責務」であり、英語ではcommitmentである。「責任」ということは、日本ではだめならやめるという意味になりやすい。問題があったら、事実を明確にして、再発を防止するという方向ではなく、責任を誰かが取ることにより、事実があいまいに葬られることになりやすい。これは責任が精神的であいまいなことが原因している。
 responsibilityのある仕事はその人が行うべき仕事をいうのであって、逆にいえば、その人以外の人が行ってはいけいない仕事である。「これは俺の仕事だ。」と手を上げリスポンスすることである。したがって、責任と権限が一体であるのは当然である。
 ISO9001では、品質システム要求事項のトップに、経営者者責任を持ってきている。これを日本的な責任とみないで、経営者が「俺の仕事だ。」という意味でみると、非常に具体的である。
 品質方針と品質目標を決め、これを従業員に徹底させ、基本的な組織を編成し、それらに責任と権限を与え、管理責任者を指名し、定期的なマネジメント・レビューを行うなどが明確である。
 経営者が責任を持って行うことは、この4.1では「品質方針」「組織」「マネジメント・レビュー」の3つを明確にしている。これが経営者の責任となる項目であって、非常に具体的である。これは一面欧米的である。それが「すべての責任は最終的に経営者にある」という精神的な表現とは、論理的につながらないように思う。
2・責務の意味
 4.1.1だけに登場する「責務」は、品質方針と品質目標に絡むことはこの項目だけにあることでも明らかである。英文では、its commitmentである。itsのitは、The suppliers management であるが、問題は、commitmentの意味である。翻訳は「責務」としているが、明確な訳でない。審査員の中には、これを責任と読み違え、「経営者は自社の品質全体に最終責任を持つ。」という文章を品質マニュアルに入れさせることがある。しかし、それは実行不可能な精神論である。わざわざ、4.1で「経営者の責任」ということで、明確に限定している意味がない。
 commitには、「公約する」「約束する」という意味もある。責務よりもこの方が理解しやすい。
 外国のある品質マニュアルサンプルを見たが「すべての責任は最終的に経営者にある」という文章がないので、外国の審査員に聞いたら「サインがそれを示している。」という回答であった。そして、彼は「枝葉の文章のことより、サインした文章を、経営者が自分の仕事として書いたかが問題だ。よく部下に優等生的な文章を書かせて、自分はサインだけという経営者がいる。それこそ監査上問題だ。」といった。その通りである。
 そう思って、あるときドキュメンタリーのテレビを見ていたら、ベトナム戦争でジョンソン大統領がベトナム戦争に関する演説でcommitmentto the warといっているのを、字幕が「戦争に対する決意」と訳していた。これで外国の監査員のいう意味が理解でき、commitmentの意味が明確になった気がした。すなわち、品質方針、品質目標という品質に関する「決意」を明確にするという意味で、したがって、経営者のサインが必要とされることになる。
 ISO/TC176「中小企業ためのISO9000」では、次のように「責務」について解説している。「経営者の品質への責務は、有形のものであり、活発であるのがよい。例えば、品質方針書に会社のオーナーが署名したものを公表し掲示すれば、従業員と顧客の双方に責務を確認することになる。」
 この責務を「決意表明」と置き換えると「経営者の品質への決意表明は、有形のものであり、活発であるのがよい。例えば、品質方針書に会社のオーナーが署名したものを公表し掲示すれば、従業員と顧客の双方に決意表明を確認することになる。」と理解しやすくなる。