?トレーサビリティは必ず必要か
 当社は、小企業の組立製品メーカーです。自主設計の製品を製造しています。予備審査を受けたところ、トレーサビリティがないので、不適合となりました。大手のOEM製品を作るときも、トレーサビリティは要求されていません。OEMの場合、トレーサビリティのために、製品に製品番号を付けると、承認を得ないとなりませんが、今の段階では、許可を得るには時間がかかります。
 審査員は部品などが問題な場合のリスクを考えるべきであると言いますが、当社の製品は、そういう性質のものでなく、かつ、長年、致命的なクレ−ムもなく、リコ−ルなどの事態も考えられません。これを行うと、品質に関係のない人を増加しなくてはなりません。
1・トレーサビリティの条件 トレーサビリティには、
 計測器のトレーサビリティや文書のトレーサビリティなどいろいろあるが、4.8のトレーサビリティは、製品の識別とセットの項目に含まれている通り、製品に刻印や銘板をつけて、その履歴を識別することである。製品識別の一種である。これは、必須でないことはISO9001 4.8で「規定要求事項に含まれる場合」と条件を明記してあることからも明らかである。過去の記録で遡り、その履歴をチェックするのはトレースであるが、ビリティ(容易性)はない。ビリテイがつくと「製品識別」の一種となり意味が変わるのである。トレーサビリティに条件をつけた理由は、無意味なコストがかかる場合があるからである。
 大手の企業はほとんど主要部品について行っているが、中小企業になると、その必要性がないことが多い。必要性がないのに、ISO9000シリーズのために記録を増加してつけると、コストアップとなり、中小企業では経営的に大きな損失になりかねない。例えば、普通の鉄板で部品を作っている板金製造業の場合、鉄板のロット番号を製品に刻印してもコストがかかるだけで意味がない。
2・指針などの説明
 「中小企業のためのISO9000:ISO/TC176からの助言」では、「トレーサビリティの要求は、書類やコストの増加となる場合があることを注意すべきである。」としている。
 ISO9000先進国イギリスのIQAの「小企業のための品質システム」のガイドでも「小企業は、生産量と外注が少ないから識別とトレーサビリティの方法については大企業の例に盲目的にしたがうべきではない。」としている。これも必要性とコストのバランスである。また、このガイドでは、トレーサビリティについて特定の顧客の要求がないときは、どの範囲までのトレーサビリティが必要かは、自社で判断すべきとしている。「ISO9000ー2:1997」でも、「トレーサビリティは、コストがかかるので、契約で要求された場合でも、その範囲の記録まで含めるかを明確にすることが望ましい。」としている。範囲は、材料ロットからトレースでき、その工程もロット番号でつながっているとその範囲は広い。範囲の狭いものは、最終検査ロットと製品個別識別(製造番号)とのトレーサビリティである。
 ましてや、自主製品で、かつ、市場の問題もなく、OEMの場合でも要求していないのであれば、トレーサビリティは必要がない。
 トレーサビリティの必要性とリスクは、コストに関係する。日本でも地震の多いと予想される地域ほど地震保険というコストは高い。しかし、ニューヨークに地震保険というコストはあるのだろうか。小企業の品質と関係のないトレーサビリティは無駄であり、経営効率低下を起こす。