T.統合マネジメントシステムを成功させるための前提となる常識(2)

4
自社の具体的なシステムは、マネジメント規格をもとに、創造的に設計することが必要である。

1.マネジメントシステム規格と個々の企業のマネジメントシステムとの関係
マネジメント規格は、実体のない抽象規格であるために、そのままでは、運営できない。実際に、存在する企業で運営するには、具体的なシステムを持たないと活動ができない。
例えば、ISO9001:2000では、「5.4.1 品質目標」で「それぞれの部門及び階層で品質目標が設定されていること」とあるが、どのような帳票で、部まで設定するのか、課まで設定するのかは具体的に要求していない。だから、そのままでは企業では運営できない。
すなわち、図2のように、マネジメントシステム規格を理解し、これを自社が運用できるように具体的な書類の様式などを設計しないと、運営はできない。図1と逆コースである。

個々に存在する企業は、業種も、規模も異なる。だから、具体的な書類とか運用は異なる。A社で運営しているシステムとB社で運営しているシステムは、本来、同じではない。

2.ISO9001:2000の序文
「個々の企業の品質マネジメントシステムの設計及び実現は、へんかするニーズ、それぞれの目標、提供する製品、プロセス、規模、構造によって異なる。したがって、ISO9001:2000の規格の意図は、個々の企業の具体的な品質マネジメントシステムを同じにしたり、文書を同じにしたりすることではない。」と言っている。
これは、自分のシステムは、規格の幅の枠内で、独自に考えなさいということである。

3.企業側の困難
(1)マネジメントシステムの設計能力の問題
ISO9001:2000やISO14001:2004を取得するときに、「自分の会社がとるのであり、社員が一番、よく、業務を知っているのだから、コンサルタントは不要で、自ら書けばよい」という考えがあるが、これは、マネジメントシステムと第1線のシステムの本質的な違いを知らない人が言うことであり、間違いである。
それは、サッカーのプレーヤーに、サッカーの監督(マネジメント)システムを文書で書けと言うと同じである。別の分野なのである。特にマネージャーが独立していない中小企業では、マネジメントシステムの設計は困難である。
家の建築で言えば、建築基準法を知らないと、法令にそった設計ができない。そして、ルールの決まった設計図を書く設計能力が必要である。そして、設計図を専門的に描けることも必要だが、重要なのはその中身である。これは経験が必要である。
そこでコンサルタントに依頼するが、そのコンサルタントが、他の会社例を持ってくる場合、設計能力がないことをしめす。コンサルタントにもいろいろあり、設計能力がない人がほとんであろう。
(2)代替案の選択能力
ISO規格の要求は抽象的だから、その要求が1つでも、具体的な実務設計になると、企業によっていろいろな代替案が存在する。そこから選択して設計しなくてはならない。
これは、このホームページで、規格の要求は1つでも、具体的な実務設計段階では、企業によっていろいろな選択肢があることを事例で示している(このホームページの「2000版項目別分類」コーナーの「4.2」の「文書変更の識別の代替案:H15年1月4週号」、「6.」の「不適合品報告書と訓練報告書の様式の代替案 :H15年2月1週号」)、「7.6」の「校正の記録方法の代替案:H16年3月5週号」、「8.2.1」の「顧客満足の測定方法:H16年6月5週号」、「8.2.4」の「検査記録の代替案:H14年7月4週号」を参考のこと)。
これらの代替案の知識を持たないと、他社の具体的な書類モデルや、共通的な書類モデルを盲目的に使用する。自社にあった設計ではなく、サルマネとなり、非効率はシステムを作り出すことになる。無駄な継続コストがかかる。

4.審査側の困難
製品規格は、数字で一義的に決まっているので、図3のように監査は明快である。

しかし、マネジメントシステムの審査の場合は、図4のように、審査員は、自分で具体化したシステムを作り上げ、それで、審査する会社のマネジメントシステムと比較して審査しなければならない。すなわち、審査員も、抽象的なISOマネジメントシステム規格から、具体的なモデルを設計しないと個別企業の審査ができないことになる。

審査員が規格を満足する多くの代替モデル持っていれば、審査は公平、かつ、スピーディに行われる。しかし、限られたモデルしか知らないときは、それと違った企業にぶつかったとき、違和感を感ずる。場合によっては、不適合にして自分の案を押し付け、それが企業の体質にあわないと、無駄な書類の発生、そして無駄なコスト増加になりやすい。
特に、審査員が大手型モデルしか持っていないとき、中小企業に対する審査は悲惨なものとなる。

それは、ISOマネジメントシステムコンサルタントの能力についても同様のことが言える。


これが、製品の規格と根本的に異なる抽象規格であるISO9001:2000、ISO14001:2004やOHSAS18001:1999のマネジメントシステムの本質的な特徴の1つである。